ファミコン風アドベンチャーならコレ!『伊勢志摩ミステリー案内 偽りの黒真珠』レビュー

フライハイワークスからNintendo Switch向けに配信されたアドベンチャーゲーム『伊勢志摩ミステリー案内 偽りの黒真珠』をプレイした感想記事になります。

本作は『ファミコン探偵倶楽部』や『オホーツクに消えゆ』等ファミコン時代に人気だったアドベンチャーゲーム(以下略:ADV)をオマージュしたレトロ風のデザインですが、ストーリーなどは全く新しく書き起こされたSwitchの新作ゲームとなっています。

因みに、私はそれらのファミコンのゲームをリアルタイムで遊んだ世代ではないので、特別な懐かしさや思い入れというものはないのですが、レトロデザインのゲームの形式ならではの雰囲気の良さやサスペンス劇場風の面白いPVに惹かれて今回プレイをしてみた口です。(なので当時ファミコンでADVを遊んだ方とは、受け止め方が少し感覚が違うかもしれません)

▼参考動画(公式PV)

ストーリーが主役のゲームという事でネタバレ内容に配慮して進めていきますので、是非ご参考いただければ幸いです。

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ファミコン時代の形式に則ったADV

本作は2019年の新作ゲームですが、ゲーム画面のドット絵や流れるBGMから感じるファミコン時代の8bit感満載な作品です。

見た目や音だけでなくゲームシステムも同様に当時のゲームを彷彿とさせるアドベンチャーゲームのスタイルを貫いており、まるで30年くらい前のゲームを復刻させたかのようにすら感じさせられますね。

例えばテキストひとつとっても、普通のゲームであれば見やすい高精細な文字を使って表記するべきですが、本作はドットのフォントを使って極力ひらがなやカタカナ表記を使う当時の雰囲気に拘っています。

また、ADVタイプとしても『しらべる』『きく』等コマンドを総当たりで選んで物語を進めていく正に古典的な形式を用いていますね。

こういったレトロ志向を売りにしたゲームは世の中に沢山ありますが、大概のものは例えば『ショベルナイト』のように現代に合わせてゲームシステムを洗練させている事が多いのですが、本作は全くそんなことはありません。

参考記事:Shovel Knight(ショベルナイト)Switch版 高評価レビュー/感想

ファミコン時代のADVを目指した完全なレトロ志向の作品ですので、古いファミコンのゲームを遊んだ時に感じるような不便さも「そうそう!昔のゲームってこういう風だよね!」とポジティブに受け入れて遊べるかが重要になりますね。

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サスペンスあるあるが楽しめるストーリー

本作はプレイヤーが刑事となっての後輩のケンと共に、東京で見つかった水死体の事件の謎を解明していくストーリーとなっています。

▲喋らない主人公の手となり脚となり動いてくれる後輩ケン。若干頼りない所もあるが有能な若手刑事。

被害者の遺留品から見つかった黒い真珠とどうやら繋がりがあるであろう伊勢志摩に行き、現地の住民から被疑者を知る人を探すところから始めるわけですが、もう完全にノリがサスペンス劇場ですね。

私はどちらかというと日曜日の昼間にサスペンスドラマがやっていると「昼間っからこんな陰気臭いの見たくないなぁ」ってTVを消しちゃうような…どちらかというとアンチサスペンス劇場なタイプなんですが、ゲームでサスペンス劇場を再現したものとして見ると不思議と興味深いものがあります。

夫に先立たれた未亡人やスナックのママ、帰省してきた美人大学生が登場したり…ストーリー上必要性のない温泉(笑)…などなどサスペンス劇場のお約束満載で、船越英一郎や中村俊介でそのままドラマ化できそうです(笑)

▲スナックのママに聞き込みをするシーンなどどこかで見たものが満載。

そういった全編にちりばめられたあるあるネタの宝庫として「そういえば昔こういうシーン見たことあったなぁ」「いるいるこういうキャラ!」と楽しむ面白さが本作にはありますね。

▲なぜかサスペンスものに出て来てくる率が高い、露天風呂の入浴シーンももちろんあります。

勿論、話の主題である「誰が犯人か?」という事も常に頭の中で考えていくわけですが、プレイヤー自身が答えを導くというよりは、サスペンスドラマと同様に1本道でリニアに進んでいくストーリーを追っていくような感じですので、『逆転裁判シリーズ』のように証拠品を集めて頭を使って答えを出すという感じではないですね。

ストーリーの話自体もそこまでドラマチックではなく、じわじわと謎の核心に迫っていく印象でその辺りの流れも実にサスペンスドラマ的です。

因みにこのレトロ感満載なゲームですが、時代設定は現代なので操作中にスマホで検索をしたりGPD等の単語が出てきたりします。

昭和レトロな雰囲気を漂わせるゲームデザインなのに物語の中に現代的な部分も垣間見えるギャップというのもちょっと面白いですね。

 

伊勢志摩に行きたくなる

本作の舞台となる伊勢志摩は三重県の南部にあり、ご存知の方も多いと思いますが伊勢神宮や真珠の養殖などで有名な地域です。 (少し前にサミットもここで行われましたね)

私も旅行で遊びに行ったことがありますが、本作には実際に存在する名所や名産品など知っている人が見たらニヤリとするものが色々と登場します。

例えば伊勢志摩に向かうパールロードと呼ばれるリアス式海岸の海沿いを走るシーサイドロードなども登場します。

▲パールロードの途中に架けられた的矢湾大橋。

志摩市観光協会ホームページより出展。現実の的矢湾大橋。眺めが良くドライブにも最適。

このロードには牡蛎のバーベキュー食べ放題のお店がたくさん並んでいて牡蛎好きにはたまらない場所だったりしますが、この他にも有名な伊勢神宮のおかげ横丁や志摩スペイン村(ゲーム内ではスピナー村)と名前を変えて登場します。

聖地巡礼ではありませんが、このゲームを遊んだ上で伊勢志摩をめぐるのも面白そうですし、現地を知っていると「おぉ、あそこね!そういえば行ったわ!」なんてかつての観光を思い出す楽しみ方もできますね。

私は以前サスペンスドラマ好きの両親に「どれもストーリーがワンパターンすぎてつまらない」と主張した事があるのですが、その反論として「お前が言うのはごもっともだが、俺たちはストーリー付きの観光地案内として楽しんでるんだよ」と言われたのをこのゲームをプレイしててちょっと思い出して「あぁ、こういうことなのか」と妙に腑に落ちましたね(笑)

 

本作の総評

本作は30年前のファミコンの時代からタイムスリップしてきたような新作で、現代のADVゲームとしてみると「なんでこれがないの?」という部分が山ほどあるゲームです。

例えば他のADVでは当たり前にある複数セーブがなかったり、Switchのタッチパネルに対応していないとか、過去のログを見直せないとか、片手操作だけで遊べないとか、ほぼ1本道で考察なくコマンド総当たりでゲーム性が薄いとか、クリアまで2時間程度で終わってしまう等…正直言って現代基準の物差しで考えると色んな所がダメです。

しかし、見方を変えるとレトロ感の再現、ファミコン時代の雰囲気が物凄く出ていて、当時をリアルタイムで体験していない私が言うのもなんですが「その時代の懐かしさ」みたいなものを体験する事においてはかなり拘りを持って作られた作品です。

なのでリアルタイムでファミコンのADVを遊んでいた人は「あ~これこれ、この感じよ!」っていう印象を持たれるのではないかなと思います。

ドット絵で描かれた簡素な映像を見て頭の中で現実に見た風景を思い浮かべながら遊んでいる自分に「昔のゲームってこうやって頭の中で想像して遊んでたんだよな…」ってしみじみ振り返ったりもして、敢えて昔のゲームマナーで遊ぶのもオツな楽しみですね。

ただ単純に面白いテキストADVを楽しみたいというのであれば『レイジングループ』等現代の作風でもっと遊びやすくストーリーの凝った名作を遊ぶのをオススメしますが、こういったレトロ感に拘りつつ、日本の地方を舞台にしたサスペンスもののADVとしてはかなり貴重な存在なので気になった方は是非プレイしてみてはいかがでしょうか。(価格も1000円とお安めです)

▼参考記事

https://nss-blog.com/2019/01/08/reijin-review/

 

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