本日は2019年5月30日にNintendo Switchにて配信された『WORDMAN(ワードマン)』のレビュー・感想記事になります。
本作に対する個人的な印象を、まず先に言うと
「二と追うものは一兎も得ず!パズルとしてもアクションとしても中途半端!」
というものです。
丁寧に作られたビジュアル。
英単語を使って解いていくパズル。
そしてアクション性もある。
ぱっと見、かなり良さげなゲームではあるのですが、プレイした感触としてはやや不完全燃焼でしたね。
決して悪いゲームではないんですけど…兎に角惜しい作品です。
今回のレビュー記事では、私がなぜに本作に対して中途半端だと感じたのか、その辺りを中心に詳しくお話していきます。
価格:1,200円
メーカー:フライハイワークス
ジャンル:アクション/パズル
プレイ人数:1人
オンライン:なし
流血表現:なし
ゲームの概要
まずはサクッとゲームの概要についてご紹介を。
本作は、アクションとパズルを融合させたハイブリッドなゲームです。
足場をジャンプで渡ったり、追いかけてくる敵からひたすら逃げる。
シンプルな横スクロースアクションゲームのルールや操作をベースにしつつも、道中に立ちはだかるパズルを英単語を使って解いて行く事になります。
英単語で解くパズルはこのゲームのユニークな部分であり、最もスポットが当たる部分ですね。
どんな風に英単語を使うのか、簡単な例を見ていきましょう。
ここに、ゲートが締まっていて進めない状況があります。
周りを見て見ると「O」「P」「E」「N」の文字が。
なので「OPEN」(開ける)という意味の英単語を、文字を運んで作っていきます。
「OPEN」の単語を作れば、英単語の不思議な力でゲートが開いて通れるようになります!
このように、英単語力を生かしながらステージ中にちりばめられたパズルを、次々と解いていく事になります。
因みに、ステージの構成は探索で行き来するような複雑なものではなく、ほぼ1本道のゲームです。
攻略で使える英単語が書かれたヒントを取りに脇道に入ることもありますが、分岐というレベルではないですね。
全体のボリュームはパズルを解くスピードによって大きく変わってきますが…
寄り道や収集要素もないので、数時間でクリアできる比較的コンパクトなゲームと言えます。
中学レベルの英単語を使って遊ぶ
本作は、英単語をある程度知っていないと難しいゲームです。
どの程度の英単語力かと言うと、中学校で習う基本的な単語が分かれば、といったところでしょうか。
「COVER」(守る)、「HIDE」(消す)
これらの基本的な単語の意味とスペルがパッと浮かぶ人じゃないと、パズルに詰まってしまう可能性はありますね。
ただ、今の時代はGoogle翻訳という心強い味方がいます!
パズルを解くのに必要な日本語が思いつけば、Googleで翻訳して英単語の答えを導くという事も可能です。
ネットで調べながら、というのは本来はただの手間でマイナスポイント。
ですが、ゲームを遊びつつ英単語を覚える機会と考えると悪くないですね。
私もスペルを忘れていた単語がありましたし(笑)
ゲームを遊んでいる過程で、このように勉強になるっていうのは得した気分になれます。
単語帳をじっと見てても覚えられない!
だけどゲームなら「あのパズルの時にあの単語使ったよな」なんて、印象深く覚えたりするものですからね。
そういった所を考えると「英語が得意」というよりもどちらかと言うと「英語の単語を忘れちゃってるから思い出したい」くらいの人の方が実益があって良いのかもしれません。
今英語の基礎を習われている方、英単語をちょっとでも覚えたいと思っている人。
そんな人にこそ、合っているゲームという印象を私は強く感じますね。
文字の持つ自由度を生かしきれていない
単語を作ってパズルを解くゲームと言うと、名作『ヒラメキパズル マックスウェルの不思議なノート』を思い出します。
このゲームでは思いつく様々な単語がパズルを解く正解としてしっかり許容されていて、プレイヤーが考えたことに対してちゃんと結果として返えしてくれるんですよね。
こんな風に言語という大海原のような題材を使って、答えに自由度があるゲームってワクワクしませんか?
私は当初このマックスウェルの様に、本作でも「英単語を自由に作って様々な謎解きへのアプローチができるのだろう」と勝手に想像していました。
しかし蓋を開けて見ると残念なことに、答えがカッチリ決まっているゲームとして本作はデザインされてているんですよね。
例えば攻撃をしてくる敵がいたとします。
それに対して「COVER」でバリアを貼って身を守るのか。
「HIDE」で相手から見えなくさせるバリアを作って身を守るか。
英単語の選択肢自体は複数あったりはします。
しかし、この二つの言葉…やっていることは同じ「バリアで身を守る」という事には変わりありません。
攻撃を反射したり、相手を痺れさせたり…
全く違った発想でパズルの解き方ができるという事は残念ながらできないんですよね。
マックスウェルしかり、ナムコの『もじぴったん』などもそうですが…
文字を使ったゲームって自由度の高いものが多いですから、一度そういった体験をした人間にとってはアレ?と肩透かしになる印象は否めないですね。
機能しない英単語にストレスがたまる
本作では、同じ意味の言葉でもパズルを解くために使える単語と使えない単語があります。
例えば、物体を「上げる」ことで先に進めるという場面で、「RISE」「ELEVETE」「FLY」等色んな「上げる」を意味する単語が思い付いたとします。
本来であればどれも正解であって欲しいのですよね。
しかし、残念なことにこのゲームでは「RISE」以外はパズルを解くワードとして反応しないんです(泣)
ゲーム序盤の内は使えるローマ字に制限があって自然と「RISE」も誘導されので問題ないのですが…
問題は、色んなローマ字の中から選んで単語を作れるようになる中盤~後半です。
「RISE」「ELEVETE」「FLY」…
作ろうと思えばどの単語も作れる状況でも、厄介なことにこのゲームでは「RISE」以外は全部不正解です。
これによってどういう事が起きるかと言うと…
例えば最初にある物体を持ち上げるために「ELEVETE」という単語を作たっとします。
そしてパズルが解けなかったのを見て、何がいけなかったのかと考えます。
そもそも「上げる」という意味の単語を、作ろうとしている事自体が間違っているのか?
それとも「上げる」という意味は合っているけど、別の英単語を使わないといけないのか?
どっちで不正解なのかが、分からないんですよね。
ですので、とりあえず色んな単語を使ってみてどれかヒットするのを探す。
それがだめなら意味を考え直す。
そんなめんどくさいプロセスを踏まなくてはないりません。
こう言うことがあると、最終的に「RISE」を導き出したとしても、納得いかないんですよね。
パズルの仕掛けは分かっているし、それの意味に合った英単語も作れる。
でもゲーム側は「自分が用意した答えじゃないので不正解!」と判定してくるわけです。
もし仮に学校のテストで、こんなことがあったら先生に対して絶対納得いかないですよね(笑)
作る側としては、そんな膨大な英単語網羅してたら時間がいくらあっても足りねぇよ!って話なのかもしれません。
しかし「答えを知ってなるほど!」と納得できるかどうかは、パズルが楽しいかどうかを大きく左右する部分ですから、妥協なくとことん作り込んで欲しかったですね。
それができていれば、本作はとんでもなく素晴らしい傑作になっていた。
そんな気がするだけに、英単語を扱ったパズルとして中途半端なのが非常に残念です。
アクションも中途半端
本作は、パズル要素が強めなゲームではありますが、かといってアクション部分はオマケかと言ったらそうではありません。
例えば、崩れる足場を上手くピョンピョンと連続ジャンプで乗り越えたり、押し迫ってくる敵から守るためのバリアを張る英単語を急いで組み立てたりとて…
じっくり考えるだけではない、頭と指をしっかりと動かすゲーム になっていますね。
そして、初見殺し的な要素も多く、何度も失敗しながら解決策を見出すようなゲーマー向けのゲームにも思えます。
しかしどうでしょう、インディーズの2Dアクションにありがちな要素で構成されていますので、自分を含めゲーマーな人たちに何か新しい刺激を与えるという感じはしません。
じゃあ非ゲーマーな人でも誰でも遊べるかと言うとそれも疑問なんですよね。
ギリギリのところから足場ジャンプとかする場面もありますので、アクションゲームが苦手だったり、非ゲーマーな人にはちょっと難しいんじゃないかなと。
結局のところパズルもそうですが、アクションも含めて、どういう人にどんなふうに喜んで欲しいゲームなのか見えないんですよね。
どこを切ってもそれなりに良くできてるのですが、じゃあ「このゲームって誰にオススメできますか?」と聞かれると悩んでしまいます。
しいて言えば「アクションが苦手でなく、パズルの謎解きも頑張れて、英語に興味がある人」ですが…
かなりターゲットが狭いですよね(苦笑)
これなら、アクション性はもっと下げても良いから、パズルをもっと作り込む。
あるいは、パズルをもっと軽くして。アクションで楽しませる。
もう少しどちらかに振って「このゲームのココは良いよ!」っていう売りを強調して欲しかったですね。
まとめ
今回は珍しく全編ネガティブな内容のレビューになってしまいましたが、最後に内容をまとめたいと思います。
1.英語力は中学レベルは必要だけれど、本人のやる気次第で学習しながら遊ぶこともできる。
2.言語を使った遊びの自由度については正直言って中途半端。結局決められた一つの答えを探るゲームになってしまっている印象あり。
3.パズルだけでなくアクション性もしっかり入れているが、どこかありきたりで既視感が強い。
本作のやろうとしているコンセプトは間違いなく素晴らしいものです。
しかし、パズルにアクション、そして学習ツールとインディー規模の開発で作り上げるのは無理があったのかなという印象があります。
特に英単語を使ったパズル部分は、大いに期待されるところです。
多少グラフィックやアクション部分を犠牲にしてでも…なんなら価格を吊り上げてでもいいので、ガッツリ作り込んで欲しかったですね。
インディーズのゲームって大手のメーカーが作るゲームと違って、ピーキーなものでも良いと思うんですよね。
1200円というロープライスですし、そんなに全体的に欲張って素晴らしいものは求めてなくて…どこか深く印象に残る部分があれば、それでいいのかなと。
本作は悪いゲームでは決してないんですけど、このゲームならではの強み!みたいなものを押し出せないのが、ウィークポイントなのかなと私は感じますね。
このゲーム、英単語を作って仕掛けを解いていくんだけど、アルファベットの並び替えだけじゃなくて、言葉の意味をひっくり返したり、ジャンプアクションあったりで色々大変w
とりあえず明日レビュー書きます。#ワードマン #フライハイワークス #NintendoSwitch pic.twitter.com/upAnS3A3BM
— にぃど@任天堂ゲー・モンハン・ユナイト (@switch_for) May 31, 2019