魂達を導く船旅『スピリットファーラー』レビュー、別れに向って生きることの素晴らしさが詰まった作品

皆さんこんにちは。にぃど(@switch_for)です。

本日は、船旅のシミュレーションゲーム『Spiritfarer(スピリットファーラー)』についてレビューしていきます。

本作の特徴を簡単に一言で言うなら、船上の看ゲームでしょうか。船旅をしながら共に暮らす魂達に一生懸命お世話をするという、ちょっと変わったゲームです。

最終的にお世話した魂達とはお別れをして行くことになるのですが、人に尽くし最期を看取るというこのゲームの不思議であたたかい体験に多くの人たちが魅了されているようですね。

先行配信されたSteam(海外版)に対するユーザー・メディア双方の評判も抜群に良いです。

私個人的にも色んな人に遊んでもらいたいオススメのゲームという印象ではあるのですが、少し気になるのはお値段が約3,000円とインディタイトルにしては高額な所なところですね。

「自分には合わなかった!失敗だった!」という思いをされないように、当記事ではしっかりとこのゲームの内容や感想、評価についてお話していきたいと思います。

基本情報機種:Nintendo Switch/PC/PS4/Xbox
価格:3,000円
メーカー:架け橋ゲームズ
ジャンル:シミュレーション+アドベンチャー
プレイ人数:1~2人
オンライン:なし
こんな人に特にオススメ!

・のんびり船旅をしたい
・未開の大海原を開拓したい
・色んなアクションが楽しみたい
・キャラクター達にお世話をしたい
・命や別れについてしみじみ考えたい

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ゲームの概要

本作では、心温まる物語だけでなく、船旅の探索や生活の中にある様々な遊びや魅力を楽しめるように作られています。

先ずは最初に、本作がいかにバラエティ豊かな魅力の詰まった作品であるかというのを知って頂くためにも、ゲームの内容について少し解説していきましょう。

大海原を自由に旅する

主人公の「ステラ」は相棒の猫「ダフォディル」と共に、船で旅する少女。「スピリットファラー」として迷える魂を導く役目を持っています。

2人プレイの場合「ダフォスディル」(猫)を2Pが操作

そんな彼女達は、世界に点在する迷える魂達を探し、死後の世界へと導くために、未開の海や島々を探索していくことになります。

初めは未開の海で海洋図も真っ黒ですが、どんどん世界が広がっていくのはロマンがありますね。

海洋図が徐々に埋まっていく

因みに、どこへ向かうかは自分の意思で決められます。朝起きて夜寝るまで、基本的に活動は全て自由なのです。

中には船を改造しないと行けないような海域もありますが、気ままに広い海を旅することができるというのも、本作が持っている大きな魅力の一つでしょう。

島々を探索する

本作では、船の上で行動するだけではなく、島々に足を踏み入れ、実際に探索することができます。

島はどれも小規模で、端から端まで数秒~数十秒といった所でしょうか。そんな中にも魂達が暮らす村だったり、鉱山があったりと実に様相は様々。

暗い坑道を探索することも

お店で物を売り買いもできますし、隠されたアイテムを探したり、木を斬って木材を手に入れたり、つるはしで石を叩いて素材を集めるなど、やれることは沢山ありますね。

主人公「ステラ」はそんな様々な目的を持って各地を訪問していくのですが、その中で最も重要なのが迷える魂達との出会いです。

魂達は動物の姿をしている

導くべき魂達を島へ渡り見つけたら、彼らを船に招き入れる。ここから魂を導く者「スピリットファーラー」としての務めがスタートします。

魂達のお世話をする

魂達を船に招き入れたら、彼らを一生懸命お世話していくことになります。もちろん他の魂達を探す事も続けながらですが。

魂達にはそれぞれ人格があり、死後の世界に行けない理由もバラバラ。まずは心を開いてもらうために、その一つ一つの願いを叶えていくことになります。

部屋を作ったりして魂のお願いを叶えていく

代表的な例で言えば食事もその一つです。このゲームでは魂といえどなぜかお腹がすくようで、放っておくと「何か食べ物はないか?」と尋ねてきます。

そのくせ「魚介類は食べれない」と平気で好き嫌いを主張してきたりして、時にはわがままな子供のように感じる時もあるでしょう。

しかし、そんなお願い(ある時はわがまま)をひたむきに叶えてくれるステラに対して、絵を描いてくれたり、心の内を打ち明けてくれたり、徐々に彼らの「ステラ」に対する接し方にも変化が訪れていきます。

船上でのクラフトワーク

船の上の生活は基本的に自給自足です。魂達のお願いを叶えるにしても、あらゆるものを自分の手で用意する必要があるわけですね。

例えば、食事を作るにしても、船尾で釣りをして魚を釣ったり、畑を作って野菜を育てたり、食材を手に入れるところからのスタートします。

好きなことして生きていく

行く場所によって商人から購入できる作物の種や釣れる魚も変わってくるので、世界の各地で手に入れる食材を使って様々なレシピを習得して行きます。

また、旅を進めていく内に設計図を手に入れて、船の施設を新たに建設する事が可能です。必要な材料を島などで集めて、それを使ってどこに建てるかレイアウトも自分で決めます。

素材を使って好きな場所に建築。移設も楽々。

木材をカットする製材所や料理を作る厨房、魂達の部屋や内装などなど、いくつもの施設を建てて船上の生活を豊かにして行くのも大事なポイントですね。

初めは何もなかった船上が、旅を進めていく内にどんどん大きくなっていき、充実した施設へとなっていく。そんな変化も本作の大きな楽しみの一つになっています。

魂との別れ

魂達の願いを叶え心残りが無くなった時、彼らは自ら今いる世界との別れを受け入れます。

そんな彼らに「スピリットファーラー」としてしてあげられる最後の仕事は、死後の世界へとつながるゲートへ彼らを連れて行く事です。

小船の上で語る魂の最後の言葉。「ステラ」に対する想いや家族・恋人の事、彼らが人生で学んだことや愛したことをじっと聞き、抱きしめ合います。

サヨナラのハグはこれまでの想いがあふれ出す瞬間

共に船の上で暮らし、奔走した日々があるからこそ、別れには名残惜しさも当然ありますよね。なんとなく『どうぶつの森』で住民が引っ越す時のもの哀しさに少し似ている気もします。

こうして穏やかなる最後を見届けた後「ステラ」が船へと戻ると、その魂が住んでいた部屋には一凛の花が残されています。まるで新たな旅へのはなむけの様に。

そして、その花によって「ステラ」は未開の領域へと行けるようになります。魂達の花は船を改造する素材となり、改たな場所へと向かうための糧という事になりますね。

このように一人ずつ魂を導いて行きながら、「ステラ」は再び新しい魂達と出会い、そして別れを繰り返していくのです。

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ゲームの印象

ここからは私が本作を実際にプレイして感じたことを中心にお話していきます。本作において何が面白く、印象的だったのか。あるいは気になる点はどこにあったのかについて触れていきます。

感情移入し、心癒される

本作を最初にプレイしてまず驚かされたのは、きめ細やかなアニメーションで描かれる世界です。

主人公「ステラ」の動作は勿論のこと、相棒の猫「ダフォディル」が寝転がっている可愛いしぐさだったり、キャラクターのアニメーションが非常に凝っているんですよね。

本作は、一生懸命お世話してお別れをするというゲームなので、キャラクターがただの記号ではなく、生きてる存在として感じるようになっているかはとても重要です。

その点で本作は、各キャラクターの特徴的な性格や設定だけでなく、ちゃんと動きでも特徴をしっかり示すことにより、登場人物達への感情移入を促す事に成功していますね。

また、こういったビジュアル面で気持ちを安らかにさせてくれるだけでなく、サウンド面でも本作は心を癒してくれます。

波のさざめく音のような自然環境音。耳に残る優しくて心地よい音楽。そういったサウンドが、本作特有のゆったりとした温かい体験を演出しているというのは間違いないでしょう。

このゲームでは基本的にはのんびりと船で移動し続ける事になるので、海を漂う心地よさをどれだけ感じられるかも非常に重要なポイントだったりします。

クラフトの適度な緩さがありがたい

本作には『牧場物語』や『スターデューバレー』など農場シミュレーションゲームと共通する点がいくつもあります。例えば、釣りをしたり野菜を育てたり、それを他の人にプレゼントして仲良くなったりとか。

種植え、水やりを行い収穫する

私も過去にそういったゲームをいくつか遊んできましたが、毎日をいかに効率的に作業していくかを考える楽しさがある一方で、作業に日々振り回されるのが少し苦手です。

例えば、野菜にしても水をやらなければ枯れてしまったり、品質が悪くなるので、あくせくジョウロで毎日水やりし続ける事が必要だったりするんですよね。(途中から水やりを楽にできる設備が作れたりもしますが)

私はそういうルーティーン的な事があまり好きではないので「う~ん、めんどくさい!」と思う事が多々あります。水やりだけならまだしも、牛たちのお世話とか色々積もっていくと大変ですし。

その点、本作は農作物に水をあげなかったり、牛にえさを与えなくても全くペナルティがないのが良かったですね。単純に育たず、収穫ができない状態のままストップするだけなので。

特に本作は、農作業だけでなく島の探索も並行して行います。農作業を気にせず探索に集中したり、心地よい音に耳を傾けて、ゆったりと船旅を楽しみたい時だってあります。

ですので、本作において「毎日○○しなくてはならない」という縛りをなくしている事は、とても理にかなっているのではないでしょうか。

シンプルかつ手軽なゲームプレイ

本作で行う作業の多くは簡単なミニゲームになっています。例えば、魚釣りであれば糸が切れないように、Aボタンを押したり離したりしてリールの巻きを調整するとか。

他にも、鉄工所では空気を送り込んで火加減を上手く調節するとか、機織り機ではタイミングよくボタンを押すと普通よりも多く素材が作れたり。

そういったシンプルな遊びが船上での生活の中にいくつも組み込まれており、テンポよくサクサクと作業をこなしていくことができます。

また、船旅の道中にはイベントが起きる場所が点在しており、船に次々と落ちる雷をビンで受け止めたり、空中する飛来するクラゲを捕まえたりとやれることが沢山あります。

一方で島の探索では少し探索アクションゲームっぽい顔を覗かせます。「二段ジャンプ」や「パラセール」など新しい能力を手に入れる事で、その先に進めるようになるな場所もありますね。

魂達から貰える玉を集めて、新しい能力を解放する「ステラ」たち。

全体的にやることはどれもアクション性が薄めで、失敗によるゲームオーバーもない優しい仕様になっているのですが、不思議と物足りなさというのを感じる事はありませんでした。

テキパキと仕事が片付いたり、勉強がはかどったりする時の小気味さと似たような感覚で、作業をテンポよくこなしていく気持ち良さもこのゲームの長所のように思えます。

焦らずじっくり遊ぶゲーム

インディーズと言えば比較的コンパクトなものが多い印象がありますが、本作は思いの他ボリュームのあるゲームです。

私がクリアまでに要した時間は30時間弱。価格(約3,000円)に見合っただけのボリュームは担保して欲しいという方にも十分なものが用意されています。

ただ、私個人的にはもう少し短くても良かったのかなと思う所も正直あります。

このゲーム、初めのうちは世界の殆どが未開ですし、やれることも徐々に増えていく過程もあって、かなり楽しいんですよね。適当に船を進ませるだけでも、次々新しい事に出会える感じですし。

それこそ開始から10時間くらいは「今年のゲームオブザイヤーなんじゃないか?」と思うほどにのめり込み、そして感動した記憶があります。

しかし、中盤から後半にかけては未開の地もほとんどなくなっていき、毎日の行動も作業化していきます。時折「これをずっと繰り返すのかな?」とふと我に返ることも。

魂達の感動的なお別れも、何度も繰り返してると麻痺してきますしね。

他にも、もっと短い方が良いと感じた理由には量だけでなく、進行フラグの分かりにくさにもあります。どこに行ったら話が進むのか分からず、ひたすら海を漂う時間もそれなりにありましたので。

魂達の依頼は日誌でいつでも確認できるが、ここに行き先など全てが記されているとは限らない。

とは言っても、このゲームでは船でのんびり放浪するのも楽しさの一つでもあるので、何でもかんでも行く先を明確にしろというのはナンセンスなのかもしれません。

例えば、とある魂が船からいなくなる失踪イベントがあるのですが、どこへ行ってしまったか分からないからこそ感じる、寂しさや焦りみたいなものがあるんですよね。

先が見えなくなる時があるからこそ、自分で旅をしている臨場感というものもきっとあるのでしょうし、この辺りは人によって印象が大きく変わる部分かもしれません。

文字が小さい!

TVやPCモニターでプレイする方には関係のない話ですが、本作は全体的に文字が小さく細々しています。

Switch Liteの液晶サイズになると特に読みづらくなり、アイテム欄の説明は拡大表示機能を使わないと何が書いているのか分からない時がありますね。

本作はプレイ時間もそれなりに長いですし、Switchの携帯モードやLiteで遊びたくなるようなゲームなのですが、文字が見づらい事を理由に私はTVモードだけでほとんどプレイをしました。

この文字が小さい問題は本作だけではなく、往々としてあることで珍しくもありません。開発者側も色々考慮した結果その形になったという事情もあるのでしょう。

ですが、Switchだけでなくクラウドやリモートプレイでスマホを使って遊ぶなど、小さい画面でゲームをプレイする人達がどんどん増えてきていると思うんですよね。

文字の見やすさは遊びやすさや疲れにくさに直結している部分なので、もっと気を使ってもらえるようになると良いなと願うばかりです。

最後に

これまでお話しした通り、本作の船旅には実に様々な楽しさが詰まっています。

毎日何をしようかを自分で考え、行動していくシミュレーション的な面白さは勿論、ユニークな世界観やキャラクターとのやり取りには何度も温まる瞬間もありました。

しかし、本作を遊んでいて私の心に実際に強く残ったのは面白さや癒しではなく、もっと別の感情でした。

本作をプレイしていると、いつか自分自身にもやってくるだろう大切な人との別れの事を、不思議と何度も考えさせられるんですよね。

例えば、作中に「アリス」という年老いたお婆さんの魂が登場するのですが、彼女は日に日に老いていき、やがて自分一人では歩けないようになってしまいます。

そんな彼女のために、階段を使わない場所へと部屋を移してあげたり、手を取って歩くのを手伝ってあげたり、「ステラ」は一生懸命お世話をしていくことになります。

私はそうやって魂達に最後まで寄り添って尽くし続ける「ステラ」を通じて、別れを意識するからこそ相手を大切にできるという事を教えられたような気がします。

いつか来る別れの日に向って私達は生きている。そこから目を反すことなく、穏やかなお別れができるよう生きる事の素晴らしさがあると。

心温まる良いストーリーのゲームは他にもありますが、こんな風に自分の人生観や死生観に影響を与えるようなゲームをプレイしたのは私は初めてですね。

途中、作業感にマンネリを感じてしまったり、行き先が分からずイライラしてしまったり、わがままに付き合うのに少し疲れそうになった瞬間もありました。

しかし、今では「それもまた人生だよね」と妙に納得してしまう自分がいます。(もしそこまでプレイヤーの心情を計算して作っていたのならビックリですが)

純粋にエンターテイメントとしての楽しい体験をしたいならもっと別のゲームをやるべきだと思いますが、このゲームでしか味わえない体験が『スピリットファーラー』にはあります。

当記事を読んで、ご興味を持たれた方は是非プレイしてみてはいかがでしょうか。

類似点があるゲームその1

野菜を育てたり釣りなどを楽しみつつ、住民たちと仲良くなって、最終的には結婚までできちゃう『ルーンファクトリー4スペシャル』もかなりオススメです。

アクションRPGのように仲間と一緒に冒険に出たり、ギャルゲーの様に好きなキャラクターとイチャついたり。イベント豊富で何週も遊べるゲームとして非常に評判も良いですね。

類似点があるゲームその2

猫耳の少女が小さな島を舞台に冒険する3Dアドベンチャーゲーム、『ジラフとアンニカ』も心が優しくなれるオススメの作品です。

『スピリットファーラー』はどちらかというと大人向けの内容ですが、こちらはキャラクターや世界観、そして難易度も兎に角優しい、大人も子供も楽しめる絵本の様なゲームですね。

私も恥ずかしながらこのゲームのエンディングでボロ泣きしてしまいました。

記事リンク:可愛いさと優しさに溢れる『ジラフとアンニカ』レビュー

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