美しき体験に心奪われる『GRIS』レビュー

本日は横スクロール型のアクションアドベンチャーゲーム『GRIS(グリス)』のゲームレビュー・感想記事になります。

このゲームは『ゲームならではの美しさとは何ぞや』というものを考えて作られた、ある種芸術とゲームを融合した”作品”です。

日ごろはアクション性や戦略性のあるゲームをチンパンジーの様にキャッキャと遊んでいるような私ですが…

そんな人間でも心震えるようなゲーム体験ができる本作の魅力をしっかりお伝えしていきたいと思います。

基本情報機種:Nintendo Switch/Steam
価格:1780円(ダウンロード版のみ)
プレイ人数:1人
オンライン:なし
暴力表現:なし
こんな人にオススメ!

・心癒されたい
・サクッとクリアしたい
・美しいものが好き
・難しいゲームは苦手

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シンプルでストレスフリーなゲーム

どんなゲームかご紹介する前に、まずは最初に本作の1枚のスクリーンショットを見て頂きましょう。

御覧の通り横からの2D視点によるアクションゲームで、絵で描かれたようなアートワークがとても印象的ですよね。

このゲームでは地続きになったステージを探索型していくのですが…

分岐路で行ったり来たり迷ったりはしないようにある程度行動範囲が限られていたり、進むべき道がなんとなくわかるように上手く導線が引かれています。

適度に探索感はありつつもストレスなくサクサク突き進んでいけるようステージが設計されているところに丁寧な作り込みを感じさせますね。

ステージ構成も飽きさせないように上手くできていて、シチュエーションは様々です。

孤独な世界
美しい結晶に包まれる

だいたいクリアまでは3時間くらいで終わる比較的コンパクトなゲームなのですが、少し進むたびにこのように大きく印象が変わるのでぎゅっと密度が詰まった濃さを感じさせますね。

因みに、このゲームのアクションはジャンプで高い場所に登ったりする程度で、ゲームオーバーの概念もありません。

行動アクションはゲームが進行するにつれて2段ジャンプができるようになったり水中を泳げるようになったり徐々に拡張されていきますがどれもシンプルな操作です。

エイの様に気持ち良く泳げる

そういったアクションを使いながら、道中には「あの場所にどうやったら進めるのだろうか?」と頭を使う謎解きに直面することも多々ありますが、

ゼルダのように悩まされて考え込むほど難しいものなく、スルスルとテンポよく進められるのが気持ちいいですね。

一部謎解きで10分くらい引っかかった個所はありましたが、全体的にゲームの進行はスムーズでストレスの少ないゲームというのが印象としては強いです。

純粋にアクションアドベンチャーとして見るとかなり簡単な部類なので、この手のジャンルが苦手な人も大丈夫なゲームですね。

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美しい体験

私はどちらかというとやり応えのあるゲームが好きなのでぬるめの難易度のゲームはちょっと物足りないと感じる事が多いのですが、

本作に限ってはゲームコンセプトに対して絶妙な難易度バランスに調整されていると感じます。

それはなぜか?というと…

このゲームってアクション性の高さや謎解きを解く達成感というよりも

「いかにしてゲーム体験の中で美しさを感じてもらえるか」

という所を物凄く大切にしているんですよね。

見るだけじゃない体験の中での美

湿った地面を歩く音や吹きすさぶ風の音…

花弁に近づくとふわっと花びらが広がったり…

ある程度余裕のあるゲームプレイの中で、そういった細かい一つ一つの何気ない丁寧に作りこまれた世界をプレイヤーはしっかりと感じていくわけです。

謎解きで「う~ん…これはこうで、ああして…」と考え込むバランスだったなら、そういったところに気付かずモヤモヤし続けるゲームになっていたでしょう(笑)

じゃあいっその事アクションや謎解きも全部なしでも良いんじゃないか?

完全なアドベンチャーでイイじゃないの?

というとそれもちょっと違います。

ただ画面を見ているだけよりも、やはりコントローラーを握って指と頭をある程度使うことで自分が感情移入しやすくなるんですよね。

坂を滑る爽快感に明かりの灯される幻想的な演出が重ねられる

想像してみてください。

他人が水を注いで咲いていく花を見るのと…

自分が水を注ぐことで咲いていく花を見届けるのにどれだけ印象の違いが産まれるかを。

プレイヤーが実際に干渉できる世界だからこそ感じられる没入感だったり臨場感があって、その中で美しさを感じるんです。

奇麗な絵を見せたいとか、見栄えの良いゲームを作ろうという表面的な美しさをに拘ったものではなくて…

「ゲームだからこそ感じてもらえる美しさって何だろう…」

そんな問いかけに対する一つの答えとなるような、本当の意味でのクリエイティブで美しいゲームなんです。

因みに、体験の中で美しさを表現したゲームというと…

私は『ゼルダの伝説ブレスオブザワイルド』や『風ノ旅人』を思い出します。

本作はそれらに勝るとも劣らない美しい体験を…それも 2Dで表現した というのは個人的に目から鱗というか、

世の中にこんなゲームがあったんだ!という新しい出会いに嬉しく思いましたね。

兎に角、美しい世界と音楽に身をゆだねる様な体験は鳥肌がずっと最初から最後まで立ちっぱなしです。

ゲームクリアまで3時間程度のボリュームだと「短すぎやろ!もっと楽しませろや!」っていつもならなりそうなんですけど…

このゲームに関してはクリアした後に一つの良質の映画を観終えたような物凄い満足感に包まれましたね。

密度が濃ければ無駄なボリューム稼ぎなど必要ないという潔さも含め、とことん”ゲームの美しさ”に拘った作品です。

 

注意点

これはゲームの内容に対するネガティブな話というわけではないのですが、これからプレイしようか迷っている人に先に知って頂きたい情報が二つあります。

TVモード推奨!!

こういった2DのゲームをSwitchの携帯モードで遊ぶ方が多いと思いますが、 このゲームに関してはTVモードで(できればヘッドフォンを付けて)遊ばないと良さが感じにくいゲームです。

ゲーム画面もキャラクターにズームインしたと思えば、豆粒の様にキャラクターが小さくなるくらいズームアウトすることも多いですしね。

全体的にキャラ表示が小さい

ストーリー設定はあいまい

テキストが一切ないというのもそうですが、描写も抽象的でストーリーは正直言って良く分からないゲームです。

声を失った主人公が、色の失われた世界で色と声を取り戻していくっていうのは分かるのですが…

この世界は一体何なのか?泣いている女性の像が沢山出てきたりするのはどういうことなのか?などのゲームの中に出てくる設定もろもろについては最後まで謎のままですね(笑)

 

最後に

このゲームは面白いゲームというよりも兎に角美しいゲームです。

システム的には横スクロールのアクションアドベンチャーやメトロイドヴァニアのゲームなのですが…

その実際の中身は体験型アートに近いため、ゲームファンなら誰にでもオススメ!というタイプのゲームではありません。

しかし、ゲームならではの美しさって何ぞや?と興味を持った方や、美しい世界に触れたいという方には是非とも遊んで頂きたい激推しなゲームです。

絵画や音楽よりももっと直感的な分かりやすいインタラクティブなゲームという事もあって芸術の様な敷居の高さはありませんし、

是非ご自身の手でコントローラーを握り、美しい世界に身を委ねる時間を楽しんでみてはいかがでしょうか。

 

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