2019年4月11日発売予定のNintendo Switch『FINAL FANTASY XII THE ZODIAC AGE(ファイナルファンタジー12 ザ・ゾディアック・エイジ)』が気になっている方向けに、既に発売されている他機種での同作の評判を調査&レポートしていきます。
FFⅫのリマスターに当たる本作ですが、元となったオリジナルは既成のFFらしさの概念を取っ払った作風やストーリーの未完っぷりに賛否両論分かれた作品でもあります。
しかしながら、驚くことに本作のPS4/Steam版に対してメディアのレビューやユーザー達の感想はとても好意的なものになっています。
オリジナル発売から10年以上が経ち現代に蘇ったFFⅫがなぜ再評価されているのか?
今回はその辺りにクローズアップしてSwitch版の前に先行して発売されている機種での評判を探っていきましょう。
価格:6,264円
メーカー:スクウェアエニックス
ジャンル:RPG
プレイ人数:1人
オンライン:なし
暴力表現:なし
本作の概要
本作の評判についてお話しする前に「どんなゲームかよく知らない」という方や「昔遊んだけどどんなゲームかはっきり覚えていない」という方もいらっしゃると思いますので、ササっとFFⅫが発売された経緯や作品の特徴をご紹介していきます。
元々はFFではなかったFFⅫ
超人気RPGシリーズのナンバリング12作目となるタイトルで、オリジナルは2006年3月16日にプレイステーション2用ソフトとして発売されました。
元々は『オウガシリーズ』や『FFタクティクスシリーズ』を手掛けた松野泰己氏がオンライン用のシミュレーションゲームとして企画していたのが始まりで、「FFを作って欲しい」というスクウェアの意向でFFⅫとして製作を再スタートさせます。
しかし、製作指揮を行っていた松野氏は開発途中に病気を患い降板することとなり開発は難航、松野氏の後任として『サガシリーズ』を手掛けた河津秋敏が引き継いでなんとかFFⅫを完成へと漕ぎつけます。
このようにFF本編としてではなく別のゲームとしての企画から始まっていた事やFF本編とは異なる作品を作っていた二人が指揮をしたという事もあり、FFⅫはシナリオやシステム、キャラクターなど様々な部分で他のFF本編とは全く異なる方向性を持った作品へと仕上がっています。
戦略的なオートバトル
FFⅫの特徴は何と言っても戦闘システムにあります。
そしてその戦闘システムの中心にあるのが『ガンビット』と呼ばれるシステムですね。
FFⅫではMMOやゼノブレイドシリーズの様にフィールド上の敵に近づくと画面が切り替わることなくシームレスに戦闘を開始し、キャラクター達はそれぞれオートで行動します。
ガンビットはそのキャラクター達のオート行動を制御するためのシステムで…
例えば「HPが30%以下の仲間」と「回復する」という二つのワードを組み合わせて「HPが30%以下の仲間がいたら回復する」といったAIのパターンを各キャラクター毎に組み上げていくことができるのです。
ガンビットの種類も様々で、強敵に対してどのキャラクターにどんなガンビットを組み上げて対策するかなど試行錯誤するのがとても楽しいシステムですね。
プレイヤーを都度コマンド入力をさせられる手間から解放するだけでなく、ロボットのAIを組み上げるシミュレーションゲームの様な戦略的な面白さを楽しめるガンビットを使った戦闘はFFⅫの最大の長所と言っても過言ではありません。
自由でやり込み甲斐のある育成
本作では『ゾディアックジョブシステム』と呼ばれる育成システムを採用しています。
『ゾディアックジョブシステム』は簡単に言うとジョブ(職業)を自由に選択できるシステムで、そのジョブごとに覚えられるアビリティや装備できるものが異なっていきます。
これは元々オリジナルには無かったシステムで、改良版としてPS2で発売されたインターナショナルゾディアックジョブシステム版(長いので以下略IJZS!)にて追加されたものなのですが、そこでは一つしか選べなかったジョブが本作では更に二つ同時に選択できるように改良されています。
これによって使いづらかったジョブの使い道ができたり、「近距離攻撃ができるマッチョな魔法使い」といったように複数のジョブを組み合わせた育成ができるようになったことでより戦略に楽しめるゲームへと進化したわけですね。
各ジョブにはそれぞれ用意されたライセンスボードというものがあり、アンロックしていくことで装備や魔法などの選択肢を増やしていくことができます。
オリジナルではどのキャラも同じライセンスボードを持っていてそれを自由にアンロックして成長させていったわけですが、ジョブごとにライセンスボードが設けられたことでよりロール(役割)が明確化され、育成の方針が決めやすくなっていますね。
因みに、Switch版/Xbox One版に関しては一度取得したライセンスをキャンセルして選びなおすことができるようになっています。
これはちょっとした追加要素ですが、ガンビット・ジョブ・ライセンスなどカスタマイズが楽しいFFⅫの魅力を大きく底上げしています。
消化不良なストーリー
FFⅫのオリジナルの評価において賛否を分けている最たる要因はストーリーと言われています。
具体的に言うと、例えば主人公のヴァンよりも他のキャラクターが中心になって物語が進行していくところや後半の超展開にまるで連載打ち切り漫画の様だ…などの不満の声が多く上がっていますね。
この辺りの迷走はシナリオを書いていた松野氏の途中離脱や開発が難航した事が影響していると言われていますが、「FFⅫはストーリーさえまともなら神ゲーだった」という声も少なからず上がっていて非常に残念な部分であります。
ザ・ゾディアック・エイジの追加要素
本作ではHDリマスター化だけではなく様々な追加要素や調整が施されています。
どれも細かい部分ではありますが、倍速モードが付いたりガンビットの追加やライセンスのリセットなどはFFⅫの戦闘及びカスタマイズの楽しさを伸ばす嬉しい追加要素ではないでしょうか。
▼追加要素/変更点
・ジョブを2つ同時に設定可能に
・ガンビットの追加
・倍速モードの追加
・モンスターと100連戦するモードの追加
・ゲームバランスの再調整
・ライセンスのリセットが可能(Switch/Xbox One版)
海外メディアの評価
ここからは本題であるザ・ゾディアック・エイジとしての評価を見ていきましょう。
まずは海外メディアの評価ですが、本作のPS4版のメタスコアが 86点! と…かなりのハイスコアを叩き出しています。
ハイスコアとして主に以下の理由が挙げられています。
・ジョブシステムの追加によってキャラクターに個性付けされ、より戦略性が高まった。
・元々のグラフィックの良さのお陰でHDリマスター映えがする。
・意外と今遊んでもゲームシステム的にもグラフィック的にも古くない
中でも、1番目のジョブシステムについてですが…ジョブが追加されたIZJS版は日本のみの販売だったのもあって、海外メディアの多くの人が今回FFⅫの改良ポイントとして評価しているのが目立ちますね。
IZJS版でジョブシステムのあるFFⅫを遊んでいる人からすると今更な感じがしますが、その辺りで日本と海外の評価の差があるのかもしれません。
グラフィックに関してはおおむね好意的ですが、オリジナルを遊んでいない一部のレビューワーの中には古臭いと指摘している人もいますので、オリジナルを遊んでいたかどうかも印象を左右するところとしてあるかもしれませんね。
Darkstation 100/100FFⅫは多くののFFファンが望む10代向けのアニメの様なストーリーと違って『ゲーム・オブ・スローンズ』の様な政治ドラマを扱っているユニークなFFだ。最も優れたポイントは探索要素で、燃えるような砂漠地帯やジャングル、凍える渓谷などシチュエーションが様々にあって、そこには動物やモンスターが生息している。オリジナルでは余り感動しなかったが高画質化によってその探索の楽しさが引き上げられているのだ。育成についてもオリジナルは皆一緒で無個性だった点で不満だったが本作で改善されている。私は当初もっと古臭く感じるのではないかと考えていたが、FFⅫは10年経った今でも現代的で新鮮さを失っていない不朽の名作だ。
Gameinfomer 90/100オリジナルではあまり好きではなかった育成システムが改善されたことで、育成の方向性が明確になったのが大きい。この改善は戦闘の面白さにも波及し、ガンビットを上手く組み合わせ勝利を導く戦略性とバトルのダイナミック感を増している。オリジナルでは無駄に広いフィールドも不満点だったが、倍速モードの追加により探索・戦闘のテンポが良くなってありがたい。PS2の時にイライラしたバトルも調整されて面倒くささは軽減されたが、困難な敵を倒そうとするならばしっかり頭を使ってガンビットを組み立てなければならないのは相変わらずだ。ゲーム自体に古臭さを感じるという事もないが、戦略性やファンタジーを楽しめるクラッシックRPGの入門としては本作は最適と言えるだろう。
IGN 8.8/10.0物語はリニアであるけどセミ・オープンワールドという感じで少しの制限を除いて最初から世界の殆どを探索できるし、時には圧倒的に強いモンスターに出くわすハプニングや行き止まりで貴重なアイテムを入手することができる。ガンビットでAIを組んで自動化し、最大効果を狙う位置取りに集中するという戦闘も面白い。今回の最大の注目ポイントは育成システムの改善で、オリジナルにはなかった各キャラクターの能力的な差別化を与える事に成功している。また、HDリマスターとしての見栄えも素晴らしく、いかにオリジナルがしっかりと書き込まれていたデザインだったかを証明している。追加要素は概ねオリジナルを改善したが、まだ物足りない所はいくつかある。とはいえ10年前に遊んだ時と同じくらい新鮮で楽しいし、新たな追加要素と調整で初めてプレイする人に魔法の体験を与える作品だ。
Polygon 85/100FFⅫは300時間ほど遊んでかなりやり込んだゲームだ。ゾディアックジョブシステムを取り入れたのは基本システムを弄るというかなりリスキーな変更だが、そのお陰で私は新たな刺激に満ちた体験を楽しむことができた。この新しいジョブの存在は最初の内は実感がなかったけれどゲームが進むにつれてより戦略的に、より計画的に敵との闘いを求められる事になり非常にスリリングになっていく。私はこの新しいバージョンで再び300時間更にFFⅫのプレイ時間を追加できそうだ。
gameplanet 70/100私はオリジナルの未経験者だが、本作を遊んでみて従来のFFから逸脱した部分を興味深く思う反面、後半の引き延ばし具合にイライラさせられた。ガンビットはターンベースに頼っていたFFの新しい道を切り開いたシステムと言えるが、人によってはガンビットを組み上げる調整に気が遠くなる作業だと感じる可能性がある。ゲームの中盤から後半にかけては面倒でイライラさせられ、倍速モードが付いていなかったら途中で投げていただろう。そして何よりも問題はグラフィックの古さだ。オリジナルのプレイヤーは気にならないだろうが、私の様な初めてプレイする人間にはのっぺりしたテクスチャーや粗いポリゴンなどから古臭い印象を感じてしまうのだ。
ユーザーの評価
続いてユーザーが本作に対してどのような感想を持っているのかを見ていきましょう。
メタクリのユーザー評価は?
Metacriticに投稿されているPS4版のユーザースコアは8.4点とこちらもメディア評価とほぼ似通った数値になっていますね。
ユーザー評価で見ていて個人的に気になったのは「昔は好きじゃなかったけど、改善された本作は楽しい」という意見です。
海外ではオリジナルのFFⅫが高く評価されているという話を見た事がありますが、意外とオリジナルに対する評価は日本と同じ賛否両論で今回それがシステム改善によって大きく見直されて評価されている印象ですね。
▼GOODの声
・懐かしさを理由に購入したが今でも楽しい
・ゲストキャラをコントロールできるのはいいね
・原作は嫌いだったけどこれで好きになった
・ストーリーが面白い!
・倍速でレベル上げが捗る!
・賛否両論から賞賛されるゲームになったね
▼BADな声
・ゲームは面白いがグラフィックが古い
・バトルが眺めてるだけで退屈
・政治をテーマにした物語が退屈
・キャラが淡白で好きになれない
Steamのユーザー評価は?
一方、Steamの評価を見て見るとこちらは更に評価が高く、90%のユーザーの方がオススメ としています。
多くの方がメディアやメタクリのユーザーレビューと同様に倍速など快適になったシステムやガンビットのシステムが絶賛されていますが、やっぱりストーリーについては微妙だという意見が多いです…(苦笑)
中には「プレイ中には腑に落ちない部分が沢山あったが、クリア後に考察を見てしっかり納得できた」という意見もあり、説明不足や分かりにくい部分へのフォローがあれば幾分か印象が変わってくるのかなという事も垣間見られますね。
まとめ
FFⅫのオリジナル(あるいはIZJS版)が評価されていた戦闘関連が強化され、不満点として挙げられることが多かったキャラ育成の無個性さや探索の手間などが改善されたことで、ゲームとしてしっかり評価を上げてきたという印象を今回調査してみて受けました。
こうやってテコ入れした部分がちゃんとユーザーにとっても有益なものとなっているのはリマスターとしてはとても好感度が高いですよね。
ストーリー部分については全く手を入れていないのでオリジナル評価からそのまま変わらずといったところですが、他で伸ばせるところでしっかり伸ばして長所で弱点を有耶無耶にしている感は嫌いじゃないです(笑)
Switchとの相性も良さげで携帯モードでのプレイも捗りそうですし、ストーリーは目を瞑れる人にとっては興味深く、「所詮10年前のゲームのリマスターでしょ?」と侮ってはいけないゲームですね。