ローグライクが苦手な人こそ楽しめる?『チョコボの不思議のダンジョン エブリバディ』レビュー

今回はローグライク風RPG『チョコボの不思議のダンジョン エブリバディ』のレビュー・感想記事です。

本作はWii/3DSにて発売された『シドとチョコボの不思議のダンジョン時忘れの迷宮』をベースに色々と改良・変更を加えたリメイクとHDリマスターの中間にあたる作品になりますが、

詳しい概要については過去の記事で紹介していますので「どんなゲームか全く知らないよ」という方は本レビューを読む前に是非そちらも併せてご覧いただければと思います。

基本情報機種:Switch/PS4
価格:5,184円
メーカー:スクウェアエニックス
ジャンル:ローグライクRPG
プレイ人数:1~2人
オンライン:なし
暴力表現:なし
ザックリとした感想

あくまでローグライク”風”のカジュアルなRPGとして作られており、ローグライクとして面白いというよりはダンジョン育成RPGとして楽しめる作品ですね。あとチョコボがめっちゃ可愛いです(笑)

こんな人向け

・地道に進めるのが好き
・チョコボに癒されたい
・育成要素を楽しみたい
・難しいのは遠慮したい

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メインはRPG!

本作はダンジョンに入るたびに構造やアイテム、敵の配置が毎回変わるローグライクの要素を取り入れたゲームですが、実のところ「ローグライクのゲーム」というには怪しい部分があります。

見るからにローグライクのスタイルをベースにしてはいるけれど…

例えば、メインストーリーで攻略するダンジョンは一般的なローグライクにあるようなアイテムやレベルのロストといった過酷なデスペナルティはありません。

普通のターンベースのRPGとのように地道に装備をより良いものにグレードアップして行ったりチョコボをレベルアップさせて攻略していくようにデザインされているので…

「ローグライクって失敗したらやり直しだから苦手なんだよなぁ」

なんていう人もRPG感覚で馴染みやすいゲームになっています。

ただ、デスペナルティはローグライクの奥深さやスリルにもつながっているので、ローグライクとしての面白さを期待している方には肩透かしになる可能性は高いですね。

ですので私はローグライクが好きな人には…

「これはローグライクというよりもRPGです」

と強調してお伝えしたいです。

中にはレベル制限やアイテム持ち込み不可など一般的なローグライクに近い仕様で遊べるダンジョンやパズル的(詰み将棋的な)ダンジョンありますが…

それらはどちらかというとサブだったりエンドコンテンツの位置づけで、メインでないという事はしっかり把握しておくべきでしょう。

ゲームの進行もストーリー主体で、時忘れの街という場所に住む住民たちの記憶を取り戻し、街の謎を解くという明確な一本の筋道が存在します。

相棒のシドと共に「時忘れの街」の謎を解明していく

住民たちの失った記憶を取り戻すためにチョコボは彼らの記憶の中に何度も入っていくのですが、その記憶の中はダンジョンになっています。

最深部にたどり着き失った記憶を取り戻せばストーリーが進み、新たな展開が起きる…という流れはダンジョンを次々と攻略していくことで物語の核心に迫っていくRPG感をさらに強めていますね。

住民の記憶を取り戻すことで、あらたな仲間が増えたり施設が解放されたりなどの恩恵もある。

 

やりこみ要素が満載

本作はチョコボの育成やバディ(仲間)を集めるやり込み要素が豊富に用意されていますので、すべてをやり込むまでには相当な時間がかかりそうです。

チョコボに関してはレベルを上げたり装備を強化していくだけではなく、15種類のジョブの中から選択して固有のアビリティ(特殊技・魔法)を覚えさせることができます。

ジョブはダンジョンの1Fや10F…と節目に出て来るクリスタルに触れる事で自由に切り替えができるのですが、ジョブによって同じダンジョンでも攻略方法が変わってくるのが面白い所ですね。

ジョブごと固有のアビリティの持つ効果は様々で、ジョブの個性を色付けしている。

例えばナイトなら守りを強化して周囲の敵を引き付けて一度になぎ倒したり、黒魔導士であれば敵に接近される前に弱点属性で倒すといった感じで戦い方はかなり変わります。

一応アイテムにも『スロウの書』といった魔法効果を起こせる本が存在しますが、消費アイテムで回数制限がありますので使用はやはり限定的です。

一方で、アビリティはMPこそ消費しますが、MPは歩けばどんどん回復しますし、回復速度も早いので積極的に使えるように調整されていますね。

その人のプレイスタイルによるところもありますが、こういったローグライク系では珍しいぐらいアビリティをバンバン使うゲームです。

色んなジョブを試して鍛えて、効果的なアビリティを使って攻略するというのはこのゲームの一つの一つの特徴的なポイントでしょう。

ゲームを進めていくことでアンロックされていくジョブはモチベーション維持につながっている。

そしてチョコボの育成以外に、今回新しい要素として加わっているのがバディの存在です。

後ろにピョコピョコと突いてくるバディ。

バディは一人(一匹)だけダンジョンに同行できるのですが、その種類はなんと100以上!存在します。

(と言っても色違いのモンスターも多いんですけどね…)

バディには特定のイベントで仲間になるタイプとダンジョンでモンスターを倒すと得られるBP(バディポイント)を貯めて仲間にするタイプがいます。

因みにこのBPは種族毎に分かれていて、例えばバット族が落とすBPを貯めていくことでスティールバットがアンロックされ…さらに貯めていくと次はウェアバットといったように段階的にアンロックされていきます。

BPは個々の種類ではなく種族ごとに分かれているので集めるのが比較的楽。

敵を倒すことで経験値やGなどが得られるのは当たり前という感覚がありますが、仲間が増えるという報酬が加わることで敵と戦う事のモチベーションはぐっと増していきますね。

因みに、バディは連れ歩かなくてもチョコボが成長すればそれに合わせて強くなってくれますので、好きなバディをずっと使い続けたり、気ままに入れ替えれるというのも良いポイントです。

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バディシステムは成功

通常ローグライクのゲームでは複数の敵を発見した場合、1対複数という状況にならないように細道に誘い込んで1体ずつと戦うのがセオリーとしてあります。

このゲームのチュートリアルでもそのように説明していますが、実のところ必ずしもそれが効率的ではないケースがあります。

例えばジョブによっては広範囲の敵を攻撃できるものもそうですが、バディと一緒に戦う貰なら細い通路よりも広い場所の方が適しているんですよね。

バディも戦いに参加できるように敢えて広間で戦うのもあり

確実に一体ずつ倒すかバディと協力して一緒にせん滅するかという選択肢が産まれたお陰でひたすら細道で戦うワンパターン化を上手く回避していると言えます。

因みに、ローグライクで仲間を連れて歩けるゲームというと『不思議のダンジョン 風来のシレン3』を思い出しますが…

AIで独立して動いてくれる仲間のおバカさがプレイヤーのストレスになっていて、作品全体の評価を下げる原因となっていました。

しかし、本作のバディはAIで独立して動くというよりもチョコボに付随するように規則的に動くのでプレイヤー側である程度制御できます。

AIで勝手に動く方がキャラとしての存在感はありますが、勝手に動いて足を引っ張られるのは本末転倒ですからゲームデザイン的にはこれが正解ですね。

 

気になるポイント

本作をプレイしてて主に気になった部分は3つあります。

どれも致命的ではないものの「もうちょっと上手くやれば本作がかなり面白いものになったのに…」という非常に惜しいウィークポイントですね。

1.ボス戦が微妙

ダンジョンの最後あるいは道中に登場するボスとの戦闘は正直言って期待外れです。

ボスは様々な特殊行動をとってくるのですが…

炎をまき散らして歩けない場所を作ったり、仲間を呼んで囲むといったような行動の制限を産むパターンや、

距離を取って戦うボスに対して近距離型のジョブがポンコツ化してしまったり…

強敵と戦って楽しいというよりもめんどくさい&雑な調整の印象を感じさせるものが多いですね。

ローグライク系だと『ドラゴンファングZ』は上手く色んなアイテムを使ってボスの攻撃を耐えつつ、打開していくタイミングを計るようにデザインされていましたが、

このゲームのボス戦はとりあえず相手に効く状態異常を見つけて殴る…みたいな単調さは否めません。

ゲーム全体としては鍛えて殴るRPG的なデザインでも良いと思うのですが、ボス戦に関してはもうちょっと戦略性が楽しめるものだったらメリハリが生まれてよかったのではないかと思います。

2.頻繁なロードが気になる

このゲームはロードを挟む機会が頻繁に起きる上にゲームの規模の割りにロードが長めなのが気になります。

例えば『ゼルダの伝説ブレスオブザワイルド』でデータ読み込みに15秒かかりますというのはプレイヤー的にも「広い世界を読み込んでいるのだからしょうがないよね」って割り切れますが、

Wiiの映像をHD化した程度のグラフィックのRPGで建物に出入りするだけで数秒、ダンジョンに入るときは30秒近いロードが挟まれるのは腑に落ちないところがありますね。

元々のハードに合わせて作っているからSwitchやPS4に最適化しきれない部分はあるのでしょうが…

この程度のグラフィックや規模のゲームであれば爆速でロードを読み込んで当たり前でしょという人も多いと思いますし、ここはもうちょっと頑張って欲しかったですね。

3.ハードモードがゲームデザインに合ってない

このゲームにはローグライクになれた人向けに「ハードモード」という高難易度のモードが初めから選択できるようになっています。

ハードモードでは敵が強くなるだけでなくダンジョンの途中で倒れた場合持っているアイテム全てをロストしてしまいますが、その代わりに貰える経験値が多くなるというメリットもあります。

私はローグライクの手強いやり応えも好きなので最初はハードモードで遊んでいたのですが、正直言ってこのハードモードはゲームのデザインとかみ合っていない…ちぐはぐな印象がありますね。

と言うのも、このゲームは地道に武器を鍛えて強くしていかないとボスに挑んでも返り討ちにされてしまうゲームデザインなので、アイテムロストをすると再度武器を鍛え直すのに大きく時間を割かれてしまうんです。

しかもダンジョンの道中の雑魚はそこまで強くない割りにボスはやたら強い傾向もあって「雑魚は既に楽勝になったからこれ位強ければなんとかなるだろう」なんていう推し測りもできず、

とりあえず挑んでみて倒されて対策を立てる…みたいなところがあるので、そのたびに装備をロストするというのはメンタルへのダメージがデカいです(苦笑)

 

最後に

このゲームは「ローグライク」というワードがどうしても前に出てきますが、何度も言う様にベースはかなりRPG寄りなゲームです。

難易度的にも初心者へ向けに作られていますし、本作は「これからローグライクをやってみたい」と思っている人にはオススメです。

いきなりコアなローグライクのゲームに手を出すと「難しすぎる!」「シビア過ぎてついていけない!」なんて諦めてしまう人もいらっしゃると思いますし、こういったカジュアルに遊べるローグライク風RPGをまずは遊んでみて慣れてからより本格的なローグライク体験を求めるのも良さそうですね。

逆にローグライクに慣れている人で「ローグライクならではの面白さを求めている!」という人は色々と物足りなさやゲームデザインへの違和感を強く感じる可能性は高いのでそこは注意して頂きたいですね。

GOOD POINT

一般的なローグライクのゲームの様に一手のミスで苦労が泡になるようなシビアさもなく、じっくりチョコボを育てたり仲間を集める育成RPGとして楽しめる。バディはストレスを感じさせない上に頼りがいもある良追加要素。

BAD POINT

怠いボス戦や頻繁なロードなど全体的に調整不足が垣間見える。元がWiiのゲームなので仕方がないが、グラフィックはかなりチープで時代を感じさせるのであくまで移植作品を改造したゲームであると割り切って遊ぶ必要がある。

 

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