先日ファミ通にて、「Nintendo SwitchがPlaystation4の国内販売台数を追い抜いた」というニュースが報道されました。
両者は発売開始時期が3年程ずれており、Switchが発売した時点で既にPS4は450万台程度を国内で販売しています。
スタートラインにそれほどの大きな差があったにも拘らず、SwitchがPS4を2年2ヶ月程で追い抜いてしまった。
一体なぜこのようなことが起きてしまったのかを考察していくと、ある一つの答えが見えてきます。
それが「年々厳しくなっていっている据置機の限界と、アイデアを持ってSwitchがその限界を打開している」という事です。
これから、結論の根拠や理由についてご説明をしていきますが、話を大きく二つに分けていきたいと思います。
まずひとつは「PS4が見せた日本の据置機の限界」についてです。
そしてもう一つは「据置機の限界をSwitchはアイデアを用いてどのように打開しているか」という事についてになります。
この二つを順序だてて説明していきますので、どうぞ最後までお付き合いください。
PS4が見せた日本の据置機の限界
管理人はSwitchや任天堂を応援するブログをこうして運営していますが、PSハードやPCでもゲームを楽しんでいる何でもありな雑食ゲーマーです。
PS4はロンチに購入して、それこそ何十本とゲームを買いましたね。
SONYは本当に最善を尽くし、魅力的なゲームをPS4で沢山発売しています。
PS3には発売されなかったモンスターハンターやドラゴンクエスト、キングダムハーツ等の新作を出すなど、ソフトラインアップは前世代機であるPS3に比べ明らかに充実しています。
ハードの値段設定も初期に6万円と狂った値付けをしていたPS3とは違い、手に届きやすい値段で提供されています。
ゲーマーにとってPS4は、PS3の比較にならない程に素晴らしいゲーム機と言っても過言ではありません。
にもかかわらず、不思議なことにPS4の普及スピードはPS3の同水準に留まっています。
まるで頭打ちになったかのようです。
一体なぜなのでしょうか?
実はそこには、「テレビ離れ」と「ソフトリリースの谷間」という、二つの問題が関係しています。
日本人のテレビ離れは年々加速しており、特に若年層に顕著だと言われています。
このテレビ離れは、テレビに繋いで初めて遊べる据置機PS4にとっては大きな死活問題です。
具体的なテレビ離れに関する調査として、総務省のホームページで公開されている資料(以下画像)がありますが、10代と20代のテレビの利用時間が、2013年から2017年の間で30%近く落ち込んでいることが分かります。
PS4は2014年2月22日発売という事で、テレビ離れが急激に進んでいる最中に日本で発売されたという事になりますね。
テレビの需要が減れば、自室にテレビを置こうとする人も減ります。
「テレビも買って、ゲーム機も買って」となると大きくハードルが上がってしまいますし、PS4は若年層にとって手の届きにくいゲーム機になりつつあると言っても過言ではないでしょう。
PSハードはかつては「中高生に人気のあるゲーム機」という位置づけでしたが、今ではこうして流入してくる新規の若年層が年々減っていくような状況があります。
テレビ離れが一体どこまで進むのかは分かりませんが、PS4は一つの限界にぶち当たってしまったという事が言えます。
PS4は4~9月辺りに話題作が少ない時期が毎年やってきます。
いわゆる「ソフトリリースの谷間」と言われるやつですね。
このソフトリリースの谷間が毎年ある事で、PS4は何度も盛り上がりにブレーキをかけてきました。
分かり易いところで言うと2018年、『モンスターハンター;ワールド』が出た年がいい例ですね。
モンハンが2018年の1月末に発売してからPS4は一気に盛り上がりを見せました。
それは、PS4本体を入手困難にさせるほどの大きなうねりの様でした。
ところが、PS4では後に続くような強力なメガタイトルが出ないまま、どちらかと言うと二ッチ1なゲームのリリースが続きます。
モンハンも対戦ゲームの様に延々と遊べるゲームではない、終わりのあるゲームなので流石に2,3か月もあれば話題性も尽きてしまいます。
そうこうしているうちに時間は過ぎていき、モンハンから約半年後。
『マーベル スパイダーマン』が30万のスマッシュヒットをするまでの間の長期間、盛り上がりに欠ける時期が続いてしまったのです。
ゲーム市場と言うのは一度冷めるとエンジンをかけなおすのに、物凄く労力がかかると言われています。
娯楽というものは生活必需品ではないので、一度興味が他に行ってしまったり薄れてしまうとなかなか戻ろうという気になりませんからね。
PS4は毎年のように温めては冷やしての繰り返しで、何度も日本の普及に歯止めをかけてしまっています。
では、なぜソフトラインナップの谷間ができてしまうのでしょうか。
その根本には「開発期間の増大」があると私は考えます。
PS4の人気タイトルの殆どが莫大な予算と労力をかけて作られています。
迫力のある映像だったり、リッチなゲームを楽しみたいという期待を背負ったゲーム機ですから、それに見合ったゲームを出そうとソフトメーカーが努力するのは自然な流れでしょう。
しかし、この開発期間が延びたとこで、今まで例えば年間に2本大作ゲームを作っていた会社が、1本しか出せなくなる…といった、ソフトリリース数の減少へと繋がるわけですね。
更には、一球入魂でお金をかけたゲームは絶対に失敗できない、あるいは会社の経営を大きく左右するので何とか決算までに間に合わせたいという状況を生み出します。
その結果、どこもかしこも「購入需要が高まる年末前」あるいは「会社の決算である年度末前」に挙って各社が大作をリリースするというわけです。
SONY自身はそこをカバーしようと、谷間になりがちな4月辺りで毎年大型タイトルを出していますが、それもあまり効果的ではありません。
SONYか春先に出すタイトルは欧米向けで、しかもCERO=Z(18禁)が多い。
日本では10~20万売れるかどうかという所です。
しかもソロプレイに寄ったものが多く、長期間遊べるようには作られてはいないのです。
6年目となる今年もPS4の春から夏にかけての「ソフトリリースの谷間」は改善される兆しはありません。
もはや「恒例の閑散期」としてユーザーにも定着してしまった感がありますね。
日本の据置のゲーム機市場が苦しい環境の中で、PS4は間違いなく健闘しました。
しかし、現在日本のPS4の普及台数800万台程。
そして、毎週の販売台数は1万強~2万弱の台数と緩やです。
今の毎週の売れ行きのペースはSwitchの半分以下で、抜き返せる雰囲気はありません。
しかも、PS4は既に6年目を迎えており、次世代機が既に開発者によって言及されています。
更には開発費の増大によってソフトのリリースペースが落ちてしまっている影響があるせいか、「ファンの期待に応えられるサプライズを発表できない」として2019年のE3※を欠席します。
※E3=アメリカで行われる世界最大のゲームイベント・見本市。世界中のメディアやゲームファンが集い、毎年新作や新情報など多くの発表が期待されている場でもある。
こうしたことからも、PS4はやれる事だけの事を既にやり切りピークを過ぎたと言っても良いでしょう。
そして最終的にPS4は今の日本の据置機の限界と言われている、1000万辺りで普及は落ち着くであろうという事が予想されます。
Switchはいかにして限界を破ってきたのか
ここからはPS4からバトンタッチしてSwitchの話を進めていきます。
SwitchがPS4を2年2ヶ月という短い期間で追い抜かせたのはなぜか。
冒頭でお話しした通り私は Nintendo Switch が「一つのアイデアによってPS4が抱えていた複数の問題を打開した事」によるものだと考えます。
そのアイデアとは、据置と携帯を混ぜ合わせた「ハイブリッド2機能」です。
では、ハイブリッド機というアイデアは具体的にどのようにPS4の抱えている問題を解決しているのか。
ここから「テレビ離れ」と「ソフトリリースの谷間」の二つの問題に照らし合わせて説明していきましょう。
Switchのハイブリッド機能は「テレビ離れ問題」に対する解決策としても、とても有効なものでした。
自宅に、あるいは自室にテレビがない…という人には、テレビが必須な据置機はどうしても疎遠になりがちです。
しかし、Switchは携帯機としての機能を備えており、TVがなくともゲームを遊ぶことができます。
実際、任天堂の調査資料を見てみますと、Switchを携帯機として扱っている人が割合として数多く存在していることが分かります。
「TVモードがメイン」でプレイをする人は全体の20%を切っており、大多数が携帯機としての機能を活用していますね。
テレビのない生活を送る人が増えつつあっても、Switchにとっては大きな問題ではありません。
いや寧ろ、直接競合するような携帯機能を持った現役のゲーム機がいない今、Switchにとってはそれすらも追い風になっているのかもしれません。
PS4だけでなく任天堂も、前世代機であるWiiUの辺りからソフトの開発期間が急激に増大し、「ソフトリリースの谷間」で大変苦しみました。
これについては、サードパーティー3のタイトルが潤沢なPS4よりも、サードパーティーのタイトルが少ない任天堂プラットフォームの方が、より深刻な問題だったと言えるでしょう。
しかし、任天堂はSwitchをハイブリッド機にすることで、WiiUで起きたような「ソフトリリースの谷間」を解消します。
これまで任天堂は、据置機には3Dのゼルダやマリオの様にスケールの大きなゲームを…
携帯機にはポケモンやどうぶつの森の様にこまめに遊び続けられるゲームを…
それぞれのゲームの適正に合わせてリリースしており、結果として人気ゲームを二つのハードで分断させていました。
しかし、据置と携帯のハイブリッド機であるSwitchが誕生したことで、任天堂の人気タイトルが一つのプラットフォームに集結します。
実際、これまでSwitchでも多少の谷間はあったとはいえ、一定周期で何十万、何百万と売れるような人気タイトルが発売されています。
しかも、Switchはハイブリッド機である故に、これまでどちらかと言うと大手の日陰になっていた、中小規模のタイトルへの関心も高くなっています。
特に個人製作や、少ない開発人数で作っているインディーズ4タイトルは、携帯モードやテーブルモードによって大きく魅力を引き出された印象がありますね。
今やインディーズタイトルを遊ぶならSwitchが良いという風潮すらあります。
それは実際に、PS4とSwitchのダウンロードのランキングを比較して見ると良く分かります。
PS4のランキングは基本的に大作やメジャーなタイトルが上位を占めており、中小規模のタイトルがなかなか上に上がってくることはありません。
一方でSwitchのランキングはインディーズタイトルや大作ではないゲームも、しっかりと幅を利かせている正にカオスな環境です。
それこそ年間のセールスの上位ほとんどを占める強力な任天堂のタイトルが揃っているにもかかわらず、インディーズのゲームを買っているユーザーも沢山いるという事ですね。
このようにSwitchは任天堂の強力なラインナップを軸にしつつ、その隙間を埋めるようにインディーズなど中小規模のゲームが立派な選択肢として機能しています。
大作や人気作に絞るとソフトラインナップの薄い時期はありますが、ちゃんとそれをカバーするゲームが出ている…というのは熱気を冷めさせない上で非常に大きいです。
そして3年目を迎えた今年2019年。
任天堂は現時点(5月)で年末までに以下の独占タイトルを掲げており、切れ目なくソフトリリースが展開される予定です。
- スーパーマリオメーカー2
- 実況パワフルプロ野球
- のび太の牧場物語
- 妖怪ウォッチ4
- ファイアーエムブレム風花雪月
- マーベルアルティメットアライアンス3
- ルーンファクトリー4スペシャル
- アストラルチェイン
- デモンエクスマキナ
- ルイージマンション3
- ゼルダの伝説 夢をみる島
- ポケットモンスター剣・盾
- TOWN
- どうぶつの森新作
初期の立ち上げに失敗したものを除き、ゲーム機というものは大体4年目、5年目にソフトが最も充実する傾向がありますが、Switchは3年目を過ぎたあたりで既にこれだけのソフトを畳みかける事ができます。
Switchのハイブリッド機能によって誘致されたゲームが翌年以降、どれだけ発売されていくのか…もはや想像もできません。
まとめ
当記事では、PS4が据置機としてこの上ない健闘をしたにもかかわらず、前世代のPS3から躍進できなかった理由として、「テレビ離れ」と「ソフトリリースの谷間」の二つの問題を提起しました。
そして、Switchはハイブリッド機というアイデアによってその二つの問題を取り除いた結果として、PS4を2年2ヶ月で追い抜いた、という考えに至ったわけですね。
因みに、私の考察の中心となっている「アイデアというものは一度に複数の問題を解決するもの」という考えは、実は任天堂の宮本茂氏※の格言をベースにしています。
※マリオ、ゼルダ、ドンキーコングなど任天堂の人気ゲームの産みの親であり、同社の最重要人物。
どこまでSwitchがその格言に則った上で開発されたものかは分かりませんが、こうしてSwitchに対しても後付けで当てはまるのが面白い…という事で記事にした次第であります。
当記事を見た方の中には「初期のラインナップが良く、ロケットスタートが切れたから」とか「おすそ分けプレイで顔を合わせて遊ぶ楽しさを再認識させたから」等…
また違った考えがあるかと思いますが、一つの考察として少しでも楽しんでここまで読んでいただけたら幸いです。