『TRAVIS STRIKES AGAIN ~NO MORE HEROES~』 レビュー/感想

グラスホッパーマニファクチャー須田51氏の久しぶりのディレクター作品となる『TRAVIS STRIKES AGAIN ~NO MORE HEROES~』(トラヴィス・ストライクス・アゲイン ノー・モア・ヒーローズ)をプレイした感想を本日は記事にしていきます。

私自身、本編となる『NO MORE HEROES 』(以下NMH)のシリーズ全二作は既に遊んでおり、本作も発表当初からかなり楽しみにしていたわけですが…シリーズファンの一人という目線で見ると、スピンオフでありながらも期待以上の面白さで、本編並みの高い満足度を感じております。

しかし、一方で今までノーモアシリーズ作を遊んだことがないという方に対してはどうか?というのを考えたときに、極端に好き嫌いがはっきり分れるような内容になっていますので、是非その辺りを記事を通して『自分に合うかどうか』のご判断いただければと思います。

それでは早速、ゲームのレビューをしていきましょう!

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ゲームの特徴と評価

■ ストーリー
6つのゲームの世界に入りクリアを目指す

本作は殺し屋『トラヴィス・タッチダウン』とトラヴィスに娘を殺された『バッドマン』が協力し、伝説のゲーム機『デスドライブmkⅡ』(以下DD2)のゲームを攻略していく物語です。

▲娘『バッドガール』の敵でもある『トラヴィス』と『デスライブmk2』を攻略するため手を組む『バッドマン』。

トラヴィスが入手したDD2には不思議な力があり、6つのゲームをクリアすることで願いを叶えることができると言われています。

また、普通のゲーム機と異なり、プレイする際にプレイヤーをゲームの中にダイブさせます。

▲DD2をプレイする度ゲームの中に吸い込まれてしまう。

ゲームに入り込んだトラヴィス達は蔓延したバグを潰しつつ、最後に待ち受けるボスを倒すことでゲームをクリア…という事で、最終的に6つのゲームをクリアを目指してトラヴィス達は『バッドマン』の娘『バッドガール』を復活させることができるのか!?というのが本作の主な話の流れになっています。

一応シリーズものという事でNMHを知っているとニヤリとする部分も多いですが、良くも悪くも話を深く読み取るというよりもなんとなく須田氏独特の世界観を楽しむものなのでNMHシリーズ未経験者の方でも深く考えずトライしてみるのも全然アリです。

■ 特徴その1
爽快スラッシュアクションに色々ごった煮したゲーム

本作のゲームのベース部分は”ひたすら敵をビームカタナでなぎ倒してステージを進み、ボスを倒せばクリア”というンプルなステージクリア型のアクションゲームになっています。

操作はとてもシンプルで弱と強の攻撃を使い分けてバッサバサと爽快に敵を倒し、強敵にはスキルや必殺技を駆使して戦う…といったテンプレ的なスラッシュアクションですが、本作が面白いのはステージによって毎回色々なジャンルの要素を組み込んでバリエーション豊かに楽しませてくれるという事です。

▲見下ろし方の視点で雑魚的相手に無双するパートが本作の半分くらいを占めている。

例えば、ステージ中にパズルを解きながら進めるものもあれば、いきなり横スクロールでマリオのようにジャンプアクションをするステージもあったり…それどころか全くジャンルの異なるミニゲームを挟んだりします。

▲色んな遊びを詰め込むことで、毎ステージ飽きさせない工夫が施されている。

ゲームプレイ以外の部分でも同様で、ステージの合間に挟まれるストーリーはなぜかドットで描かれた昔風のビジュアルノベルで語られたりします。

▲次のステージへ行くまでのストーリーをビジュアルノベル形式で読んでいく。

このように本作は一応スラッシュアクションをベースにしたものではあるものの、色んなものがごった煮になったカオスなゲームとなっています。

統一性のあるゲームを好きな人にはまとまりがないと突っ込まれそうですが、私のように飽き性な人間は色んな要素が詰まっているのは嬉しいですし、随所に色んなゲームへのリスペクトが込められていて遊んでいて嬉しくなりますね。

ただし、御覧の通りゲーム画面がキャラクターから引き気味で全体的に小さくこじんまりしたゲームなので、NMH本編のように臨場感のあるゲームではない事は購入する前に知っておいたほうが良いですね。

■ 特徴その2
シュールでカッコイイ須田節が全開

NHMシリーズでお馴染みのトイレでセーブをする演出もそうですが、道中のキャラクターに「飲みの二次会は行くな。お前にとって得られるものは少ないぞ…」と画面のこちら側にメタ的な言葉を投げかけてきたり、全編にクスッとさせられる皮肉やシュールさが満載の作品です。

▲この下世話で突っ込みを入れたくなる世界観がNMHの魅力。

また、DD2が初代PS世代のスペックのゲーム機という設定を生かして、当時使われていたような粗いカクカクなポリゴンのムービーや実写ムービーなど時代を感じさせる描写を積極的に取り入れているのもかなりユニークですね。

▲ゲーム度に導入で見せるムービーが凝っていて、毎回見るのが楽しみ。

また、このゲームのキャラクターは皆物凄くアンバランスで、例えば主人公トラヴィスにしても殺し屋というシリアスなバックボーンを持ちつつも、日本のゲームやアニメが大好きなオタクであったり、ラーメンブログを書いていたと単純にカッコイイキャラとしては描かれていません。

ギャグなのか真面目なのかイマイチつかみきれないキャラクター達が多数登場し、飽きさせないというのがNMHシリーズの伝統であり、本作にもしっかりそこは継承されています。

言葉は少し悪いかもしれませんが王道から外れた邪道の良さというのでしょうか…そんな風にアンバランスなキャラクターや世界感に魅力を出しているところはまさにNMHらしさでもあり、須田51氏の作家性の塊のようなものに仕上がっていますね。

▲シリアスなデザインのボスキャラ達も他のゲームでは見ないような個性の塊で面白い。

真面目なストーリーや真っすぐにカッコイイキャラクター等の王道を好む人には「なんじゃこりゃ…」と受け付けられないかもしれませんが、たまには王道を外したいな…という人には本作のオンリーワンなカッコよさが刺さる可能性は高そうです。

■ 特徴その3
やりごたえのあるゲーム性

単純爽快なスラッシュアクションでありながら『無双シリーズ』の様に同じような動きの敵を草刈りのようにバサバサ倒すだけではなく、ちゃんと相手の動きを見て「上手く操作するとカッコ良いアクションが爽快に決まる」というツボをしっかり押さえているのはポイントが高いですね。

特にボス戦は力を入れて作られている印象で、相手の隙を見つけて攻撃チャンスを見極めたり、自分でスキルを組み合わせて有効な戦術を探るなど考えて攻略する楽しさがありますね。

スキルは攻撃だけでなく囮を作り出したり色々な効果のものがあって、数が揃ってくると取れる戦術の選択肢が増えて面白くなってきます。

▲スキルは同時に装備できるのは4つまで。ネーミングにガンダムの名前が使われているのはトラヴィスの趣味なのだろう(笑)

例えば盾を張るスキルで四方に壁を作って敵が近づけないようにして安全な環境で回復スキルを使うとか、敵を一か所に集めるスキルを使ってまとめて衛星で焼き切るスキルで攻撃したり…ゲットしたスキルを試行錯誤して攻略にちゃんと生かせるのも良いですね。

雑魚敵キャラクターについても種類豊富でそれぞれに個性付けもされていて、シンプルなアクションゲームにありがちな雑魚戦の単調さを感じさせないようになっていますね。

この辺りは低予算だと手を抜きがちなところなんですけど、本作はちゃんとわかっていてしっかり雑魚戦も面白くしています。

▲ステージを進める度に新たな雑魚敵が次々と登場し飽きさせない。

この手のゲームのセオリー通り終盤になってくると硬い敵も増えてきますので、ひたすら攻撃しているだけでは雑魚敵すらも苦戦するようになりますが、スキルを上手く活用することで爽快に倒せるように調整されているところは個人的に好きですね。

■ 特徴その4
難易度は割と高め

難易度設定として『SWEET』『MILD』『BITTER』の三種類があります。

私は他のゲームで言うノーマルにあたる『MILD』でクリアまで遊びましたが、『ダークソウル』等のような”死にゲー”ほど難しさはありませんが、クリアまでに何度かゲームオーバーになるくらいには難しい、ややゲーマー向けの難易度設定になっていますね。

ですので、アクションゲームがあまり得意でないという方は『SWEET』で遊ぶのをオススメします。

また、クリア後は更に『SPICY』という超高難易度が出てきますが、開発者の人たちですらクリアできないと言われていた通りの激ムズでした(笑)

因みに、『MILD』でクリアにかかった時間は10時間くらいで、この手のゲームででは丁度良いサイズではないでしょうか。

1ステージ単位だと1時間~1時間半くらいの長さですが、やや難しい難易度なので1ステージが少し長く感じる部分ありますね。

半分くらいの長さでステージ数が倍あると理想的ですが、限られたリソースを考えると仕方ないのかな…。

■ 特徴その5
ローカルマルチプレイ対応

本作は『トラヴィス』もしくは『バットマン』のどちらかを操作して遊ぶ一人用だけでなく、ローカルマルチで二人で同時に遊ぶ事が可能です。

それぞれのキャラクターには専用のスキルもありますが、2人で交互に上手くスキルを連携して使ったり、協力して放つ必殺技等、一人ではできなかった攻略が楽しめます。

マルチの場合でも敵が増えたりはしないので、本作が難しいという人は他の人と一緒に遊ぶことで難易度を下げることができますね。

Nintendo Switchのおすそ分けプレイ機能にも対応しています。

インターネットを通じたオンラインマルチに対応していないのは少し残念ですね。

■ 特徴その6
名作へのリスペクト・オマージュが満載

須田氏は自分がリスペクトするものをオマージュとして取り入れることを好むタイプですが、本作ではいつも以上に好き勝手やっている印象です。

例えば映画のターミネーターの1シーンだったり、ゼルダの伝説のリンクがアイテムを取る演出、DD2の起動時の「デースドラーイブ♪」が昔のセガハードの「セーガー♪」っぽかったりとか(笑)…元ネタを知っていると思わず吹いてしまうオマージュがあちらこちらに転がっていて終始笑いながらプレイをしてしまいますね。

▲「ごまだれ~♪」で有名なゼルダの伝説でアイテムを入手したときの演出をオマージュ。

また、こういったオマージュとは別にインディーズの有名作品のコラボTシャツを集める収集要素もあって、例えば『Undertale』の様な超有名タイトルや『Hollow Kinght』、『Dead Cells』のような去年配信された比較的新しいタイトルの絵が描かれたTシャツをトラヴィス達に着せ替えすることができます。

▲なぜかDD2内で集めたコインを使って現実世界のネット通販のTシャツが購入できる。

このように須田氏のゲームや映画に対する愛情が本作にはたくさん詰まっていてる作品なので、元ネタをより沢山知っているゲーム好きな人ほどより楽しめる…そんな作品になっていますね。

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人は選ぶけど面白い

須田氏のゲームではNMHもそうですが世界観やテキストの面白さに定評がある反面、ゲーム部分についてはそこまで評価が高くない作品が多いのですが、本作においては良い意味で狂ったシナリオだけでなくゲーム部分でもしっかり楽しめるものになっていたのが意外でした。

今回はインディーズ規模での開発という事で低予算なのも明らかですし、実際ゲームの規模やキャラクターのモーションやグラフィックデザイン等大手の大作と比べると明らかに見劣りします。

しかし、昔のゲーム作りがそうだったように限られたリソースで面白いゲームを作ろうという工夫や気概が垣間見えますし、実際想像していたよりもアクションゲームとしてずっと良くできています。

▲こじんまりとした画面では伝わりにくいのが残念だが、アクション部分は見た目に反してしっかりしている。

単純にアクション部分だけを考えたら、ちょっと値段は高めですけど十分面白いゲームだとオススメです。

ただ、いかんせん好きなことを盛り込むために大衆受けみたいなところをバッサリと切り落としているゲームなのでどうしても人を選ぶ、評価が分かれるゲームという事になってしまっていますね。

例えば、ぶっ飛んだシナリオは「これが須田51のシナリオだ。真面目に受け止めるよりもノリで楽しめ!」と割り切れる人でないと、意味不明で困惑してしまいそうです。

「開発費の都合でお前との戦闘は避けさせてもらう!」みたいなメタ的なテキストや途中で突拍子もなく全く別ジャンルのミニゲーム(しかもこれがそこそこ難しく作られて苦戦します)を挟んだりするのも好き嫌いがかなり分かれそうです。

かなり尖ったゲームであることは間違いないですし、それに加えて3000円を超える値段もネックになっています。(これが1000円とかならとりあえずやってみてはどうでしょうか?という感じなのですが…)

ですので、須田氏のゲームを今まで遊んだことがないという方に向けてメッセージを発するなら、「普通のゲームには飽きていて変わり種を求めているのなら合うかもしれない」という少し濁した言葉になってしまいますね。

逆に、私のようにNMHシリーズが好きだったり、須田51氏のファンという方にはかなりオススメの作品と言えます。

ジョイコンを上下に振ってビームカタナを充電したり、決め技にプロセス技を決めたりとノーモアらしさ満開でニヤニヤが止まらず、NMH1・2も再び遊びたくなりますね!

また、『シルバー事件』等須田氏がこれまで関わった過去作の作品のネタやアッと驚くあの作品とのコラボ等ニヤリとするネタもふんだんに詰め込まれていますので、是非その辺りも楽しみにして頂きたいです。

本作がある程度成功すればNMH3も制作が現実化するという話も須田氏も言ってますし、NMHの続編を待っている人はもう兎に角買うしかないです!

 

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