Switch版『Hollow Knight(ホロウナイト)』レビュー・感想~ダークソウル x メトロイドヴァニアの傑作~

『Nintendo Direct E3 2018』にて紹介後即配信というサプライズでSwitchに登場した『Hollow Night』について本日はレビューをしていきます。

まずレビューの前に先に言っておきますと、このゲームはSwitchの2018年前半に出た新作インディーズタイトルの中でもトップクラスのイチオシです!

同じジャンルで『スチームワールドディグ2』というゲームが今年発売されており、2018年のベストインディーズはこれになりそうだなと思っていたのですがそれと双璧になるような作品が出てまいりました。

1500円のロープライスながら相当な濃厚さを持った素晴らしいゲームですので、しっかり本作の魅力をお伝えできたらと思います。

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メトロイドヴァニア x ダークソウルというコアな要素を結集させて遊びやすくしたゲーム

本作は虫の世界に築かれた謎の地下遺跡を探索するゲームでジャンルは2Dの探索型アクションの所謂”メトロイドヴァニア※”と呼ばれるタイプになります。

※2D探索型アクションは同ジャンルの代表である『メトロイド』と『悪魔城ドラキュラ』(洋題:キャッスルヴァニア)を合わせたネーミングの『メトロイドヴァニア』として呼称されることが多い。

可愛らしい主人公が釘を武器に戦い探索するゲーム

能力やアイテムを拡張していく事で当初行けなかった場所が行けるようになる探索性や広いマップに散りばめられた収集要素等の”メトロイドヴァニア”に求められるお約束はしっかり組み込んでいます。

そして他の”メトロイドヴァニア”のゲームとの差別化として『ダークソウル』等のトライ&エラーを繰り返す”死にゲー”の要素を上手く洗練させて取り込んでいるのが大きな特徴です。

 

ここで本作が死にゲー『ダークソウル』から影響を受けた部分と独自に改良された内容について少し具体的に掘り下げてご紹介します。

▼お金のロストに関して

『ダークソウル』に影響を受けた”死にゲー”要素として真っ先に目立つのはロストの概念ですね。

本作は敵を倒したり宝箱から得たお金をゲームオーバーによって失いますが、一度だけそれを獲り返すチャンスが与えられます。

ゲームオーバーになった場所に戻ると自分の中から生まれた影の様な存在が現れ、それを倒すことでお金を回収できますがもう一度ゲームオーバーになると完全に失効してしまいます。

倒された場所に現れる影。こちらに近づいて攻撃をしてくる。

当然死んでしまった危険度が高い場所ですので大量のお金の奪取が掛かっている時の緊張感はかなりのスリルを感じさせます。

ただ、影は『ダークソウル』のように倒された場所に固定した場所に滞在せず、こちらに気づくと向かってくるので誘導して安全な場所でお金を取り返すという事も可能なのが良いポイントです。

影の動きも単純でワンパターンなので油断さえしなければ倒される事も少ないでしょうし、この手のシステムを取り入れた他のゲームと比べて取り返しがしやすくなっていますね。

▼フォーカスされたボス戦

”メトロイドヴァニア”の多くはボスよりも探索に重きを置いている作品が多いと思いますが、本作はどちらかというとボス戦も大きなウェイトを占めていて数多くのボスが配置されています。

中にはストーリーの進行とは関係のないボスもいますが、倒せば戦闘で有利になるアイテムを報酬としてゲットできる場合も多く、ついつい寄り道して倒したくなりますね。

ボスはどれも特徴的な動きでダメージを与えていくと段階的に動きを変化させていく。

それぞれのボスを初見で倒すのはかなり難しいですが、予備動作や死角を持っているのでそれをいかに見極めて対処するかが重要になってきます。

テクニック以上にしっかりと相手を観察して動きを知るという事が攻略の肝というのも『ダークソウル』からの影響がしっかり出てますね。

個人的にボスにおいて調整が上手いなと感じたのは、ボスの体力が低めでコツを掴めば短期決戦で決着がつくという点です。

『ダークソウル』をやっていて良くあるのが倒し方が分かっていても戦闘が長引いて集中力が切れてやられてしまうというパターン…これって精神的な疲労が半端ないんでよね。

本作のボスはコツがわかってしまえばスムーズに倒せるので上記の様なストレスを感じにくく、どんどんボスと戦いたくなります。

▼体力の回復手段

本作の主人公はソウルを使って体力を回復させることが可能です。

ソウルというのは敵を攻撃すると得られるエネルギーのようなもので、それを一定量貯えると回復魔法のようなものが使えると考えて頂ければOKです。

この体力回復には3秒ほどその場で硬直して溜める時間が必要なのでボス戦は特にどのタイミングで回復をするかの見極めが非常に重要になってきます。

『ダークソウル』にも体力回復の薬を飲むと産まれる隙がありましたが『エスト瓶』が個数有限で使い切ってしまうお終いなのに対して、本作はボス戦でもソウルを吸収して使うことが可能なので瀕死の状態でも何とか粘って体力を回復させて持ち直して逆転というケースも往々にして起きるというのが面白いですね。

…このように本作が色濃く『ダークソウル』からの影響を受けた上で更に各要素を改善させている作品という事がお分かりいただけたと思いますが、『ダークソウル』等の多くの”死にゲー”と違って本作は2Dのアクションゲームなので操作性の敷居が低かったり敵との距離感がつかみやすくて遊びやすいというのも一つ大きなポイントでしょう。

 

”死にゲー”で当たり前にあるアレがない

”死にゲー”として色々な要素を本作が取り込んでいることをお話しさせていただきましたが、逆に”死にゲー”に当然あるべき一つの要素が本作にはありません。

それは環境による『即死要素』です。

このゲームには棘や主人公を押しつぶす罠、体を溶かす酸の池等他のゲームなら触れたら即ゲームオーバーになる環境がいたるところに散りばめられています。

いかにも落ちたら死にますってシチュエーションでも大丈夫。

しかし、そられに触れても即死せずHPを1つへらしてすぐ直前の場所に戻されるという意外にも優しい仕様になっています。

これだけ”死にゲー”を意識した作りをしているのに『即死は理不尽だからやりません』ときっぱり割り切っているところは非常に好感が持てますね。

あくまで”死にゲー”の面白い部分は積極的に模倣はするけど理不尽な部分や遊びにくくさせている部分は排除して遊びやすい”死にゲー”を作ろうというコンセプトがしっかりと貫かれています。

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幻想的でダークな世界観が素晴らしいが虫が苦手な人は要注意

本作のゲーム性について語ってきましたがここで少しゲームの世界観についてお話ししたいと思います。

本作は2Dのアニメーションが非常に良くできておりキャラクターはシンプルながらなだらかに動くアニメーションが特に素晴らしいです。

アクの強いキャラクターたちがたくさん登場するのも本作の面白いところ。

細かな背景の書き込みや幻想的で美しい音楽とは対照的に登場人物はシンプルな絵ですがその躍動感ある動きで生き生きと画面を動き回っています。

ボスキャラのデザインやモーションも個性豊かで本作の一番の見どころではないでしょうか。

ただ1つ気になる点としてあるのは、本作は虫たちの世界の物語でデフォルメされているとはいえ虫が苦手な方にはちょっときついかもしれないという事です。

中にはちょっと気色の悪い虫たちも登場する。このワームよりも気持ち悪い虫は多くはないが存在する。

多足の虫や地面からにょきにょき生えて唸り声を発する蛆虫の列みたいなのが出てきて私も何度かゾゾゾッと背筋を凍らせる場面があったので苦手な方はご注意ください。

 

インディーズとは思えないボリューム感は素晴らしいが無駄な時間も多い

本作はコンプリートや寄り道せず普通にクリアするだけでも20時間を余裕で超える内容で、更に寄り道や真エンドを迎える為の時間を考えるとその倍くらいは行きそうな”メトロイドヴァニア”の中でも破格のボリュームです。

マップのサイズもただ広いだけでなく各エリアに分かれた中で敵のバリエーションやシチュエーションを豊かにしていますのでこのボリュームでも飽きを感じにくく工夫されています。

その他にも『チャーム』と呼ばれるアイテムによるカスタマイズ要素で能力を強化させたり、掴まっている芋虫を助けて報酬をもらうなどやり込み要素もふんだんに用意されていてフルプライスのパッケージソフトで売られていてもおかしくないですね。

ただ一つ難癖をつけるとしたら…このゲームのプレイ時間の全てが有意義な時間でないのが惜しい所です。

本作はマップの色々なところにアイテムを売り買いしてくれる虫や武器を鍛えてくれる虫などが点在しています。

それに加えて過去に行けなかった場所を改めて訪れ直すゲームの進行スタイルが合わさってマップの移動の行き来が多くなり、時折めんどくささを感じさせられるのです。

ある程度ポイントをワープできるファストトラベルを設けて負担を楽にはしていますが、これならば『スチームワールドディグ2』の様にせめて一つの拠点にアイテムショップを集約させてほしかったなという思いが強いですね。

 

『Hollow Knight』の総評

”メトロイドヴァニア”に『ダークソウル』が確立させた”死にゲー”の要素を洗練させて取り込んでいるのですから面白くないわけがありません。

これらのジャンルが好きな人は勿論の事、好きだけど挫折し続けて諦めてきた人たちにも本作を強くお勧めします。

しかし、一方で注意しなくてはならないのが”メトロイドヴァニア”も”死にゲー”も人を選ぶゲームであるという事です。

それらのジャンルのゲームと比較しても本作は遊びやすくなるように工夫はされているとはいえコアな人向けな要素を結集させてできているゲームなので、そのどちらも体験したことない人がいきなり挑戦して無理でした…というパターンもありうると思います。

ですので個人的には”メトロイドヴァニア”や”死にゲー”にあたるゲーム遊んだことがない方はまずは遊びやすい『スチームワールドディグ2』から体験してみて次のステップに本作を遊んでみるのもいいと思います。

以前にレビュー記事も書いておりますのでご興味ある方は是非そちらもご覧ください。

『スチームワールドディグ2』レビュー・感想 ~完成度高し!傑作探索アクション!~

 

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