刀の一閃にシビれる快作!『KATANA ZERO』レビュー

2019年4月18日に配信されたアクションゲーム『Katana ZERO(カタナ・ゼロ)』のレビュー・感想を本日はお届けします。

当ブログではこれまで『Dead Cells』や『Hollow Knight』、『Celeste』、『ショベルナイト』などインディーズの良作をいくつもご紹介してきましたが、

本作はそれらと比べても引けを取らない作り込まれた快作!としてプッシュしたい作品であります。

アクションゲームが好きな人は勿論ですが、正解を見つけるパズルゲームっぽい所もあるゲームですので「あまり普段こういったゲームを遊ばないよ」という人にも当記事を通じて興味を持って頂けたら幸いです。

基本情報機種:Switch/Steam
価格:1,580円
メーカー:Devolver Digital
ジャンル:アクション
プレイ人数:1人
オンライン:なし
暴力表現:あり
こんな人向け

・クールな侍アクションを楽しみたい
・パズルを解くような試行錯誤が好き
・ドット絵のサイバーパンクを見たい
・アウトローなストーリーが好き

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ゲームの概要

本作は『ドラゴン』と呼ばれるサムライが主人公の2Dアクションゲームです。

緻密なドット絵で描かれたサイバーパンク的な世界観を舞台に、殺し屋として刀を振り回し大暴れしていくわけですが…

本作の主人公はただのサムライではなく「時間を操る特別な力」を使うことができる特殊な能力の持ち主なのです。

容赦なく人を斬り捨てていく「ドラゴン」の二つ名を持つ主人公はどうやら裏社会でもかなり有名な殺し屋らしく、彼を恐れている人間も多い。

時間を操る能力とは何か?という事なんですが、いつでも自分の好きなタイミングで時間の経過をスローモーションにすることができます。

この能力を使う事で、普通は速すぎて回避すらままならない銃弾を避けたり、弾道を見極めて刀ではじき返す!なんていう達人芸もできてしまうわけですね。

そしてもう一つできる事がありまして、それは時間を巻き戻すという事です。

敵に倒されても、ビデオを巻き戻しするように少し前のポイントまで戻ることができるので命を失うことはありません。

この二つの時間を操る能力を駆使してプレイヤーは、襲い掛かる敵を次々と斬り捨てて行く事になるのです。

左上のゲージの残量の分だけ時間をゆっくりにすることができる。連続で使い続けるのは限界があるが、時間経過でゲージが回復するので割と使い放題。

こういった時間を操る能力の他にも、壁を三角飛びしたり、回避でレーザーを潜り抜けたり非常に身体能力が高い一方で…

敵の攻撃に一撃で倒される紙装甲やスローモーションに時間制限があったりなど弱点もあります。

ですので、むやみやたらに特攻してもあっという間にハチの巣にされてしまいますので…

どこで時間をスローにするのか、周りに使えそうなモノが落ちていないか、どの順番で攻撃するか…などなど頭を使った攻略が求められます。

操作感は完全にアクションなんですけど、手順を考えて組み立てるという所はパズルゲームの攻略に近いですね。

ゲームの構成はステージクリア型で全部で11ステージ(クリア後に一つ追加)で、エンディングロールまでは大体6~8時間程度で到達できるボリュームになっています。

比較的コンパクトではありますが、アクションゲームでこの価格であれば過不足ないボリュームではないでしょうか。

アクション部分だけではなく会話パートもかなり凝っていて、アドベンチャーゲームの如く選択肢によって展開が変わる所も面白いですね。

例えばホテルの受付のお姉さんとの会話シーンを例によると、彼女に対してどのように接したかで…

会話は一方的に聞かされるだけではなく、複数の選択肢がどんどん与えられて選んだものによって会話も変化していく。

その後駆け付けた警察から「この人はお客さんよ」と庇ってもらえるのか、

「こいつが犯人よ!」と通報されて戦うことになるのか、異なるゲーム展開になります。

対応が悪かったせいで警察に突き付けられ戦うことに。上手く会話で好印象を抱かせていればスルーもできたので選択は慎重にすべし。

物語の大筋が変わるマルチシナリオという感じではありませんが、再度プレイするの時に選択肢によってどう変化が起きるかも一つの楽しみとなっていますね。

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死にゲーでも気持ち良く遊べる⁈

本作はいわゆる『死にゲー』のカテゴリーに属するゲームで、序盤からクリアまでにかなりのデス数を積み上げることになります。

こういったゲームは達成感や歯ごたえを楽しめるのは良いのですが、人によって面白みを見出す前に心が折れてしまったり、ストレスが溜まって疲れてしまう…という場合も少なくありません。

しかし、本作においては死にゲーでありながら不思議なことに最後までそういった感情を抱く事が殆どありません。

それどころか…

序盤からクリアまで気持ち良~く遊べます!

これを聞いて「死にゲーなのに気持ち良く遊べるってどういう事やねん⁈」という方もいらっしゃると思いますので…

その理由についてはここから少し掘り下げて説明していきましょう。

攻略において高度なテクニックが不要

主人公の動きが非常にスタイリッシュなのでとてもテクニカルなゲームのように見えますが、実のところ求められる操作テクニックはそれほど高くありません。

操作も刀を振る、ジャンプ、回避行動、時間をゆっくりにする、物を掴んで投げる…この程度で非常にシンプルですしね。

テクニックが求められるゲームでは攻略法が分かっていても、敵の速い反応に対応できなくて倒されたり、穴に落っこちてゲームオーバーになってヤキモキさせられることも多いですが…

このゲームに関しては攻略の糸口がつかめれば「なんだ、こんな簡単だったのかw」というくらいサクッと進められるようにデザインされています。

攻略法を掴めば勝ち確定みたいなものなので、失敗を繰り返していく中で敵の配置やパターンを学び「どうやってこの極致を乗り切るか」にプレイヤーは集中して楽しむことができるのです。

試行錯誤が楽しめるデザイン

本作では進行ルートや打開方法に幅を持たせたステージデザインが(一部を除き)施されているので、プレイヤーごとにその攻略手順が変わってきます。

ある人はステージギミックを使って敵を倒したり、ある人は正面から突破したり、ある人は別のルートを使って不意打ちをしたり…

そういった何パターンも攻略ルートがあるおかげで「1つの用意された答えを見つけなくちゃいけない!」という息苦しさを感じることなくプレイできるんですよね。

ステージによっては正面から斬りかかるだけでなく、例えば煙を出すアイテムを投げつけて敵の視界を奪って倒すといったような工夫をして戦ったりすることもできる。

この辺りはちょっと『ゼルダの伝説 ブレスオブザワイルド』の謎解きやゲーム攻略に通ずるものがあって個人的には大好物です!

「こっちを試したらどうなるんだろうか…あ、失敗した!」

「じゃあ、こっちの方が簡単かも…行けた!」

「あ、このアイテム使った方が更に安定して進めるかも…」

…といったように、失敗を繰り返す中で一つの答えに縛られず攻略を自分で組み立てていく「試行錯誤の楽しさ」をしっかりと実感することができるのは良いですね、やっぱり。

デスペナルティがZERO

主人公は何度も時間を巻き戻せるのでにゲームオーバーという概念はありませんし、リトライポイントがかなり細かく設定されています。

倒されるたびにビデオの巻き戻しのように逆再生で戻っていきますが、それが煩わしければボタン一発一瞬でローディングも無しで戻すことができるのも良いですね。

以前PS4に出た『ブラッドボーン』という死にゲーを遊んだことがありますが、復帰のローディングに60秒くらいかかっていて耐え切れず辞めてしまった記憶があります(苦笑)

ゲーム的には凄く好きだったんですけどね…。

その経験があった故に本作のように快適に復帰できる死にゲーは非常にありがたく感じますね。

こういったデスペナルティやわずらわしさをなくしていることで、プレイヤーが積極的にチャレンジして、失敗を積み重ねる事を肯定的にとらえることができるのです。

 

飽きさせない、丁寧に作られたゲーム

インディーズのゲームを遊んでいると尖っていて荒々しいものだったり、システムは良くできているけどやる事が単調でクリアまでモチベーションが保てないことがよくあります。

しかし、本作においてはそんな荒々しさや単調さを全く感じることなく、最後まで丁寧に作られた完成度の高さに正直驚かされます。

少人数の製作、1500円の価格…これらをすっかり忘れさせるような本作の丁寧な作り込みについて、ここでは詳しくお話していきましょう。

豊富なステージバリエーション

このゲームでは主人公に成長要素がなく、基本アクションも最初の状態から増えて行かない代わりにステージ毎のレベルデザインを工夫することで楽しませる工夫が沢山施されています。

例えば、クラブのDJをターゲットにしたミッションでは躍っている客に隠れながら敵の視界をかいくぐるスニーキングミッションがあったり…

ハイウェイをバイクで走るステージやドンキーコングを彷彿とさせるトロッコステージなどの乗り物系を挟んでみたりと様々なステージを攻略していくことができるのです。

ドンキーコングシリーズのオマージュ全開のステージ。実は難易度的にはドンキ―よりも比較的簡単。

また、ステージ内にはセキュリティ用?に仕掛けられたレーザーやオイルの入ったドラム缶などが置かれていたりして、それを上手く使って攻略していく等で多彩なプレイが楽しめます。

ボス戦も毎ステージというわけではないですが、2ステージに1回ほどの頻度で登場します。

ボス戦に関してはステージ間と違って倒し方がカッチリ決まっていますが、各キャラはユニークでモーションがとてもよくできていてどれも非常に印象深いですね。

書き込まれた日本人好みのドット絵

静止画だと分かりにくいかもしれませんが、このゲームのドット絵はプレイをしているとアニメーションや書き込みの拘りなどから非常に手間をかけて作られていることが分かります。

主人公の紅茶を飲むしぐさや女の子が躓いてコケる動きなどキャラクターのモーションはヌルヌル動きますし、それらにちゃんとあった効果音を合わせている事でキャラが生き生きしていて見ていて楽しくなりますね。

背景についても『ブレードランナー』や『攻殻機動隊』とかの80年代のサイバーパンクからの影響を匂わせる、きらびやかなネオンの光や陰鬱とした暗い世界観を上手く見せる事に成功してます。

スチームパンク感満載のどんよりとしたネオンが輝く街をビルから眺めるシーン。風の音や服がなびくアニメーションが相まって雰囲気抜群。

海外製のゲームはドット絵でも独特なバタ臭さみたいなものがあったりするのですが、このゲームのデザインに関しては昔のFFとか今のインティクリエイツの様な日本製に似た香りがしますね。

まぁ実際の元となったデザインを見たら「なんじゃこりゃ…」ってなるかもしれませんが(笑)

ゲーム内ではカッコイイ、カワイイドットのキャラクターが登場しますので、これから遊ぶ人はそれらのデザインや動きにも是非期待してください。

先が気になるストーリーテーリング

このゲーム…実はストーリーについてもかなり濃厚に描かれていて、ついつい先が気になって進めてしまう所があります。

主人公は過去の記憶を失っているという設定で、ゲーム開始時から多くの謎を抱えた所から始まりまります。

精神科医らしき人物と毎日カウンセリングを行い、怪しすぎる謎のクスリを注射されたり…

毎晩見る意味深な悪夢…

謎を呼ぶライバル風のキャラや組織が登場するなどなど…

物語が進むにつれてどんどん興味深い内容になっていきます。

ドラッグやイカれた人間達が沢山登場するアンダーグラウンド的な世界で、主人公の失われた記憶を取り戻した先には何があるのか?

最後まで気になるストーリーに引き付けられますね。

あと、海外製のゲームでストーリーに絡む部分で気になるのが翻訳の質ですが…

「あれ?日本で作ってるゲームだっけ?」

なんて錯覚起こすくらいにネイティブな日本語っぽくローカライズされていますので、そこはご安心ください。

 

気になるポイント

正直言って個人的にこれはアカン!という気になったポイントはありませんが、客観的にみてひょっとしたらこれを気にするという人もいるのではないかな?と感じた部分についていくつかお話してきます。

短いゲームプレイ

ゲームのボリューム的には値段相応という話は前述しましたが、インディーゲームには2000円くらい出せば何十時間と遊べるゲームが存在している以上本作のボリューム(クリアまで6~8時間程度)に不満を持たれる方はいらっしゃると思います。

また、主人公に武器やスキルのパワーアップ要素などがなく、クリアした後にキャラを育てるようなやり込みによるモチベーション要素がないのもプレイ時間を短くしている要因ですね。

敵キャラのバリエーションが少なめ

ステージギミックや配置などで上手く工夫してゲームプレイを飽きさせないようにしていますが、登場する敵キャラクターのパターンはボスを入れても20種類行かないですね。

ボス戦に関しては5種類ほどなので、アクションゲームとしてはかなり少ない方です。

キャラクター1つ1つのモーションが凝っていますし、ドットゲーなのに細かく斜めの位置とかも対応してくるのを見た限り、製作作業量がかなり多そうなので仕方ない所はあると思いますが、

沢山の種類の敵キャラと戦う事を求めているという方はクリアして「あれ?これだけ?」と思われる可能性はあります。

グロ表現はかなりあります!

ドット絵なので血飛沫が飛んでも嫌悪感を感じる事はあまりありませんが、一部のシーンで鈍器でドつきまくったり、体の一部が欠損するシーンがあります。

これはただグロくしてそういう嗜好の人に訴求しようという浅はかなものではなく、アングラな世界を演出するために取り入れられている表現だとは思いますが、苦手な人には辛いものがありそうですね。

例えば指をペンチで〇〇するシーンなど…効果音がやけに生々しく、耐性のある私でもちょっと「うっ!」っとなるような場面もいくつかありました。

続編ありきのシナリオ

これは個人的には嬉しいことなのですが、どうやら本作の続編があるようです。

聞くところによると有料DLCになるという話で、それを見越して本作だけでは回収されない複線がいくつかあります。

1作ですっきり全てを終わらせたいという方はモヤモヤする可能性がありますね。

 

最後に

『Katana ZERO』は私が今年Nintendo Switchで遊んだ中では今のところベストゲームです。

このあとインディーズで『Slay the Spire』などのGOTY級のゲームを遊ぶ予定ですし、『ファイアーエムブレム風花雪月』などよっぽどのやらかしがなければ絶対楽しめそうな大手メーカーのゲームが6月以降押し寄せてくるので先の事は何とも言えませんが…

少なくとも2019年を振り返る年末辺りで「今年はKatana ZEROもかなり良かったよね」なんて名前が挙がるゲームなのは間違いないですね。

アングラなストーリーや死にゲーアクションというところで人を選んでしまうところはありますが、

アクションゲームが好きな人や頭を使ってゲームを解くのが好きな人にはぶっ刺さるであろう完成度の高いゲームなので、是非興味ある方はは是非プレイしてみてはいかがでしょうか。

GOOD POINT

敵の銃弾を刀ではじき返し、颯爽と切りつける…そんな憧れのサムライアクションを堪能できる。魅力的なドットアニメーションや世界観も素晴らしく、難易度の上昇曲線やレベルデザインなど丁寧に作られたところに製作者のこだわりや愛情を強く感じるゲーム。

BAD POINT

クリアまでの時間が短い所や続編ありきなところが不満点になり得る。随所に挟まれるグロ表現はドット絵ながらもゾッとさせられる生々しさがあるので注意。

 

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