テヨンジャパンから発売されたダウンロード専用ソフト『Human Fall Flat』はNintendo Switchで配信されて以降ダウンロードランキング上位に食い込み続ける定番タイトルと言ってもいい程の不動の人気の作品として売れ続けています。
カラフルで明るいゲームの多いSwitchのランキング中で見た目はとても質素な雰囲気で見るからに独特な異彩を放っている本作ですが、なぜここまでSwitchのユーザーに受け入れられているのか、どこがそんなに魅力的なのかを感想踏まえ今回探っていきたいと思います。
本作は3D空間をキャラクターを操作して謎を解きひたすら先へと進むパズルアクションゲームです。
大きな特徴としてあるのがまず、のっぺらぼうのふにゃふにゃしたキャラクター…通称『ふにゃべぇ』※とその操作感ですね。
▲なぜか理由は分らないがステージ開始や地形から落下すると空から降ってくる「ふにゃべぇ」。
『ふにゃべぇ』は人型をしていますがまるで骨のないふにゃふにゃな挙動がとてもユニークかつシュールです。
そしてもう一つの特徴は敵との戦闘など一切なく、謎解きを繰り返しひたすら先へ先へと進み続けるシンプルなゲームデザインです。
謎解きはスイッチの上に箱を置いたりするシンプルなものから、てこの原理や振り子運動など私たちの現実世界で実際に起きる様々な物理法則を上手く利用して攻略していきます。
▲箱庭の世界でパズルを解きながら突き進むパズルアクションアドベンチャー。
硬いものをぶつけるとガラスが割れる…等私たち現実世界で考えられる常識に対して、ゲームがちゃんとそれに応えてくれるという点で箱庭世界で行う物理シミュレーション的な面白さも感じることができます。
また、最大4人までのマルチプレイにも対応しており、オフラインで本体を持ち寄ったり画面を分割したりして友達とワイワイ遊ぶだけでなく、オンラインで見知らぬ人とも楽しめます。
ボリュームとしては謎解きにどれだけ時間を要するかによって個人差が出るとは思いますが、私は10時間ほどでクリアをしました。
この手のアクションパズルとしても長すぎるのもそれはそれで大変ですし、1500円程度の価格帯から考えても丁度いい塩梅ではないでしょうか。
よゐこの濱口さんが『よゐこのインディーでお宝探し生活』というYotubeの任天堂公式番組で名付けられた名前です。本来の正式名称も不明であり、ファンの間では『ふにゃべぇ』が浸透しているという事もありここでもその名称を使っています。動画については下の方にリンクを貼っておりますのでご興味ある方はチェックしてみて下さい。
多くのゲームではプレイヤーが自分の思う様に快適で操作しやすいものを目指して作られていますが、本作のプレイヤーキャラである『ふにゃべぇ』は軟体動物の様に何をするにしてもふにゃふにゃと動く為、自分の思うような制御がなかなかできません。
普通のゲームであれば「なんだこの操作性!」と批判されてしまいそうですが、実はこのゲームは制御が上手くできないキャラクターを動かす面白さを楽しむという逆転の発想でデザインされているのです!
▲関節がおかしな方向に曲がっているがこれはバグではなく仕様。このシュールさあふれる動きが滅茶苦茶面白い。
例えばゼルダの伝説の主人公リンクであれば箱を持ち上げてスイッチの上に置く…なんてことは造作もない事ですが、ふにゃべぇは指定された場所に箱を置く事すら慣れていないうちはふらふらとあっちに行ったりこっちに行ったりと四苦八苦させられます。
そこには上手く操作ができないストレスは多少はあるにしても、それ以上にちょっと間抜けな動作に対する笑いや動きの愛らしさ、スリル感といった面白さにしっかり繋がっています。
極端な事を言ってしまうと、大人がモノを運んでいるのを見ていても何の面白みもないですが、よちよち歩きの幼児がモノを運んでたらハラハラしたり見ている側も一喜一憂をするのと一緒で、不器用なキャラクターだからこそ面白い!を考えて作られているゲームなんですね。
そしてこれがマルチプレイになると更に面白さを倍増していきます!
仲間がふにゃふにゃと変な動きや予測できない行動を取る為「おいおい!なにやってんの?(笑)」と絶えず笑いが起きたり、時にはお互い引っ張り合いの喧嘩をゲームの中でしてみたり(ふにゃふにゃなので間抜けです)、コミュニケーションを図るゲームとしてもかなり楽しめますね。
ふにゃべぇの動きに癖がある分アクション内容は非常にシンプルで「移動とジャンプ、ものを掴むアクション(左右両手)」となっており、あとは右スティックの3Dカメラの操作さえできれば誰でも遊べるような敷居の低さも相まって、友達や家族と一緒にワイワイ遊ぶゲームとして上手くハマったというのもありそうですね。
本作は謎解き要素も大きな売りの一つとしていますが、100人プレイヤーがいたら100人同じ答えで解くような開発者が用意した答えをきっちりなぞるというものではなく、ある程度複数の答えがあったり、時にはぶっとんだやり方でクリアできるような締め付けの緩い設計がされています。
▲木で塞がれたドアを発見したので一つずつ剥がしていく。全部剥がせば通れるが…。
▲いっその事その剥がした木をガラスにぶつけてぶち破るのもよし…。
▲いや、寧ろドアやガラスなんて無視して近くにあったマットを積んで足場にして壁を登るのもあり。
『ゼルダの伝説ブレスオブザワイルド』をプレイしたことがある人はあれの謎解きに近いものと考えてもらっても良いかもしれません。
序盤こそチュートリアル的に答えをきっちりなぞる様に進めていくわけですが、途中からは「結局あれは使わずに済んだけど何かに必要だったのかな?」といったオブジェクトも散見されはじめ別の解法が気になったりしますし、他のプレイヤーの動きを見て「え?そんなやり方で行けるの!」なんて目から鱗の発見があったりと自由度の高さに驚かされることがあります。
しかも本作が面白いのは一人でも複数人でも同じステージで同じパズルを解いて遊ぶ…という事です。
これで一体何が起こるか具体例で言うと…例えば地面に設置されたスイッチがあり、これを押し続ける事で開くドアがあったとします。
▲スイッチを押すと壁のドアが開くシンプルな仕掛け。
もし一人プレイでこのドアを潜り抜けるには箱等の重しを探してきてスイッチの上に乗せる必要がありますが…
▲箱をのっけてドアを開けっぱなしにすれば壁の向こうへ行ける。
二人で遊んでいる時は片方のプレイヤーに乗っかって貰ってドアを開けてもらうことができてしまいます。
▲ローカルマルチ(画面分割)で二人で遊んでいる光景。このように用意されたものを無視して遊べてしまう。
ちゃんと開発者が用意した答え通りに進めないのはある意味ズルをして進めたという事に近いかもしれませんが、このように他のプレイヤーと協力して開発者の意図の枠を超えた答えを出すのも本作の面白さの一つだったりします。
そして複数人で協力することによって新しい方法を見つけたり、謎解きが上記の様に力業で簡単にクリアできてしまうというメリットが打ち出されていることで”パズルゲーム特有の窮屈さを取り除き、途中で詰まってやめてしまう人を救済できるようになっている”というのも本作が多くの人に受け入れられている理由の一つではないかと私は考えます。
本作はふにゃべぇが頑張ってパズルを解いていく動きを見て癒されたり笑ったり、友人や家族とワイワイ楽しんだり、オンラインで見知らぬ人とゆるゆると協力を楽しんだり…非常にカジュアルなパズルアクションゲームになっています。
謎解きアクションというと途中で難しくて詰んでしまったり、人と協力して遊ぶものにしてもきっちり各個人が決められたアクションをしないと進行できないように作られているもの多いので「ちゃんとやってくれよ!」ってストレスをお互い溜めたり溜められたりすることが有ったりするものですが、本作ではそういった息苦しさも少なく最後までプレイする事が出来ました。
キッチリデザインされたパズルゲームや快適に自在に動かせるゲームというのはそれはそれで魅力的な所は勿論ありますが、本作は敢えてそのセオリーとは逆を突いて多くのプレイヤーに「体験したことがない新しいユニークなゲーム」として受け入れられたのではないかと私は考えます。
それに加えてアップデートでオンラインに対応したことで身近に一緒に遊ぶ人がいない場合でもマルチの楽しさを体験できるようにしたという所もかなり大きいのではないでしょうか。(本作はマルチが楽しいゲームとしてPRされていることが多いのでソロプレイのみでは楽しめないのでは?という懸念を持った人も多かったはずです)
マルチでワイワイ遊ぶか、一人でじっくり遊ぶかその辺りでまた感想は変わってくると思いますが、本作の緩いユニークなパズルアクションに興味のある方であればどちらの遊び方をするにせよ満足度の高い作品ですので興味のある方は是非遊んでみてはいかがでしょうか。