Switch版『大神 絶景版』レビュー・感想 ~名作は今なお輝くのか?~

『大神』はオリジナルのPS2版以降様々なハードにこれまで何度も移植されてきましたが、Switch版の『大神 絶景版』の発売で12年目を迎えることになります。

これほど長く愛される理由として独特の和の世界観やディレクターの神谷英樹氏(現プラチナゲームズ所属)のアクションゲームへの卓越したセンス等様々な優れた点が語り継がれてきましたが、何分10年以上も前のゲームです。

「未プレイの人が今更遊んでも面白いのか?」

「アクションアドベンチャーに革命をもたらした『ゼルダの伝説ブレスオブザワイルド』や『スカイリム』等を遊んだ人がそれ以前の『大神』を今更楽しめるのか?」

この辺りの疑問を持っている方も少なからずいらっしゃるかと思います。

今回のレビューはそういった疑問を持った方にもできるだけ参考になるように”敢えて『大神 絶景版』を2018年に遊んでも十分に面白いものなのか?”という所に視点を置いた内容でお届けしたいと思います。

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『大神』の唯一無二の世界観は今なお美しい

『大神』…といえば何といっても日本神話や昔話を題材にした世界観を筆で描いたようなその超個性的で美しい3Dグラフィックですね。

本作はHDリマスター版という事でPS2時代よりも大幅にきめ細かいグラフィックへと強化されています。

▲大神の筆書きの様な映像がリマスターで更に映える

HDリマスターされたゲームはHD画質でくっきり映像が見えるようになる分PS2準拠で作られたポリゴンの荒さやライティング(光や影の表現処理)のチープさ等が目立つようになりやすい傾向があります。

しかし、本作は不思議なことにそういった印象は一切ありません。

▲大画面もいいが携帯モードでも十分に美しい。

口うるさい事でも有名なPS2版大神のディレクター神谷英樹氏(現プラチナゲームズ)も居酒屋で初めて携帯できる『大神 絶景版』をカプコンの人たちに見せられて…

思わずニッコリです(笑)

他のリマスターの成功事例で言うとWiiU『ゼルダの伝説 風のタクトHD』もかなり素晴らしい出来でしたが、こういったトゥーン調な映像はフォトリアルなものよりも見るからにリマスターの恩恵を受けやすそうですよね。

▲『風のタクトHD』は単純な高解像度化やワイド化だけでなく、テクスチャやライティングを現代化させる事で飛躍的に綺麗になった理想的なリマスター。

本作が『絶景版』の名にふさわしく美しい映像になっている理由の一つには『大神』が3Dのゲームながらトゥーン調に近い、平面に筆で描いた日本画の様な絵作りだったこともありそうです。

また、リマスター版の開発を担当した『ヘキサドライブ』のブログ(以下参照)にて事細かいこだわりの調整に関する言及がされており、ここでも良リマスターの『風のタクトHD』との共通点が伺えますね。

※テクスチャ=キャラクターや背景などのポリゴンの表面に張られる皮膚のようなもの。昔の解像度が少ないTVに映される事を想定して作られたたテクスチャはそのまま高画質化すると荒さが際立ってしまう。

出典元:『大神 絶景版(HDリマスター)~絶景の舞台裏~』

あくまで映像はゲームの魅力の一部分とはいえ『大神』はビジュアル面の美しさやアートスタイルも高く評価されたゲームなので、今の普及しているTVの画質に見合ったものになっていなければ魅力は減ってしまいます。

そこをしっかりと踏まえて最新のゲーム機でもチープさや違和感なく楽しめるレベルまで映像面を高めた『絶景版』は『大神』の持つ映像面の魅力もしっかりと伝わってくる良きリマスターです。

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随所に古さを感じさせるがそれでもなお光るゲームデザイン

本作は3D空間の探索や人々との出会い、敵との闘い、そして謎解き…と『ゼルダの伝説シリーズ』からの影響を色濃く感じさせるゲームです。

『ゼルダシリーズ』よりも謎解きの難易度は低めで詰まりにくいので比較的誰にでも勧めやすい万人向けな印象がありますが、リマスターで強化された映像とは違ってゲーム内容は10年以上前のそのままのものですので、今遊ぶと古く感じる部分と今でも通用する部分が共存しています。

主人公「大神」(アマテラスオカミ)の操作性

本作では犬…ではなく狼の姿をした神様、天照大神(アマテラスオオカミ)もとい「大神」をプレイヤーが操作します。

操作感は流石アクションゲームの神様的な存在である神谷ディレクターが作ったゲームなだけあって、ニナカツクニ(日本)を走り回り敵をバシバシなぎ倒すアクション性は今触っても気持ちが良いですね。

同氏が後に作った『ベヨネッタ』もそうなんですけど、移動の時の疾走感や敵への攻撃時の手触り等への拘りはこのころから既に出来上がっていたことが分かります。

フィールドはシームレスではなくエリア式

『大神』の様な3Dアクションアドベンチャーは『ゼルダの伝説ブレスオブザワイルド』や『スカイリム』の様に”地続きで繋がった広い世界を冒険する”というのが当たり前になりつつあります。

▲今は見渡す限りどこにでも行けるアクションアドベンチャーがある以上、それらと比較されるのは仕方がない。

一方で『大神』はPS2時代のゲームなので、エリア間の読み込みが発生したり見えない壁で行けない場所の制限が多かったりと世界の窮屈さを感じさせられますね。

ただ、1エリアはPS2のゲームにしては思ってた以上にかなり広く作られており、同じくSwitch向けで今年発売された『イース8』よりもエリア1つ1つの大きさは広い印象です。

ですので上記の様なAAAタイトル級の世界の広がりを期待さえしなければ許容できるレベルではありますね。

×隔離される戦闘パートは古臭く退屈

元々『大神』の戦闘パート自体はそれほど評価が高くないイメージがありましたが、確かに改めて遊んでみた印象では同じ神谷氏が作ったのちの作品の『ベヨネッタ』や『Wonderful 101』と比べると微妙な印象がありますね。

特に戦闘がシンボルエンカウント式なのは古さを感じさせる大きな要因です。

敵のシンボルに触れると…戦闘エリアに転送させてそこでアクション操作で戦うという事になるのですが、これのお陰で折角のゲームへの没入感が削がれて「ゲームしてる感」が強くなるんですよね。

出典元:大神 絶景版 公式サイト

PS2というハードの性能上これは仕方がないのですが、やはりどうしても古さを感じさせます。

それと戦っていて楽しさを感じる敵が少ないのもイマイチな理由の一つです。

日本人なら誰でも知ってる聞いたことがある妖怪たちが次々登場するのは凄く嬉しいのですが、戦いに駆け引きをあまり感じさせず単調に感じてしまします。

神谷氏の作品の割には難易度はかなり温めに調整されている方なので、誰でも遊べる様に敢えてそうに作っている可能性は十分に考えられますが、近年の同氏の作品の戦闘の楽しさやバリエーションの豊かさを一度味わうと肩透かしを食らう印象は否めないです。

「筆しらべ」はSwitchに最適化され楽しい!

本作のシステムで最もユニークなものと言えば「筆しらべ」と呼ばれる「大神」の特殊能力です。

これはRボタン(もしくはLボタン)を押すと現れる筆を走らせ、その描いたものによって風を起こしたり、水を噴水させたり等と色々なインタラクションができます。

▲筆の書き方によって花を咲かせたり、木を伐ったりと意外と色んなアクションを起こせる。

PS2の時はスティック操作で筆書きするしかできなかったのが、Switch版はタッチパネルとJoy-Conのジャイロ操作両方も使えるという充実ぶりで、どの機種よりも操作の選択肢が豊富です。

どれがいいかは個人差が出る部分だと思いますが、個人的にはやはり実際に字を書く感覚に近いタッチパネルの操作がやり易く一番おススメでPS2版よりもかなり快適に遊べる印象です。(携帯モード限定ではありますが)

逆にJoy-Conはコントロールに結構コツがいるので好き嫌いが分かれそうな印象ですね。

何度でも会いたくなる愛しいキャラ達

兎に角登場するキャラクター達の魅力が素晴らしく、どれだけ時間が経ってもキャラクター性やストーリー的な部分はやはり時代を経ても変わらないというのを実感させられます。

神谷氏は割とシュールなキャラクターを作るのが得意な人ではありますが、特にそれが本作では神がかっていますね。

本作の登場人物は日本神話や昔話から持ってきたものが多いのですが、どれもどこかがおかしいキャラばかりです。

例えば牛若丸をモデルにしたウシワカは何故か英語交じりの口調で愛刀の名前は『ピロウトオク』(未成年はピロ―トークをググってはいけません!)というおかしな設定だったり、伝説の英雄の子孫スサノオはヘタレのオッサンだったり終始一々面白くてニヤニヤが止まりません。

▲喋らない大神と饒舌な虫イッスンは凸凹な名コンビ。

▲道中に出会うおかしな登場人物たち。これだけバリエーション豊かに個性の強いキャラを作れるところに神谷氏の奇才ぶりが垣間見える。

大神が発売から10年以上たっても今もなお愛され続けているのはやはりこの世界に命を吹き込まれたこのキャラクター達あってのもだと改めて実感させられますね。

全体的にはふざけたキャラばっかりなんですが、時に真剣な部分を垣間見せたり…ホントこのゲームの登場人物たちは見ていて楽しすぎます。

 

『大神』は今でも輝く名作である

今回レビューを書くうえで色々と自分の中の『大神 絶景版』の評価を改めて整理してみましたが、今オススメできるゲームか?とズバリ聞かれた場合、間違いなくYESと答えられるゲームです。

アクション部分や謎解きの部分はシステム的な古さもさってそこに面白さを求める人には物足りないと感じられる可能性も高いですが、日本画風の美しいグラフィックや個性豊かな 癒されるキャラクター達は唯一無二で他に変えがない良さを持っていますので、その辺りに惹かれている方ならまず買って損はないゲームです。

価格もDL版なら3000円を切るようなお手頃の値段かつプレイ時間も30~40時間位のボリュームでお買い得ですので興味がある方は是非一度手に取ってみてはいかがでしょうか。

 

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