皆さんこんにちは。
今回レビューするのはインディーズタイトルの中でも、抜群に評価の高いアクションゲーム『Dead Cells(デッドセルズ)』です。
本作は「ローグヴァニア」というジャンルをうたった作品で、「中毒性の高いローグライク」と「探索が楽しいメトロイドヴァニア」という二つのジャンルのゲームを組み合わせたゲームになります。
詳しい内容についてこれからご説明しますが、時間を忘れて遊んでしまう時間泥棒かつ、長く遊べるコスパに優れた本作の魅力を、できるだけ余すことなくご紹介していきたいと思います。
価格:2,480円
メーカー:Motion Twin
ジャンル:アクションアドベンチャー
プレイ人数:1人
オンライン:あり(スコアランキング)
暴力表現:あり(流血表現など)
主人公が細胞?!
先ずは最初にプレイヤーの分身となる主人公からご紹介しましょう。
本作の主人公は、ズバリ「死者の身体を乗っ取る細胞」です。
ゲームを始めると主人公(細胞)はすぐに捨てられた人間の身体を見つけ、その身体に乗り移ります。
このゲームは決して一度に一気にクリアできるようなゲームではなく、何十回も敵に倒され、ゲームオーバーになりながらもクリアを目指すトライアンドエラー前提のゲーム。
ゲームオーバーの度に主人公は、こうして新しい人間の身体にとりつくわけですが、毎回同じ場所に戻り、毎回同じ能力の忍者の様な格好をした身体に乗り移ります。
乗り移るの毎回違う人間なはずのに、なんで?と突っ込むのは無粋ですね(笑)。
設定やちょっとバイオレンスじみたから雰囲気から少しシリアスな感じのゲームに受け取れますが、陽気な性格の主人公のお陰で暗さというものを不思議と感じさせないような作りになっています。
無声映画のようにジェスチャー激しく「俺に任せろ!」と親指を立てるしぐさ等、彼の行動には世界観や設定とのギャップがあって見ていて楽しくなりますね。
見事な融合
冒頭で述べました通り、本作は「ローグライク」と「メトロイドヴァニア」を掛け合わせたゲームです。
当記事をご覧の方の中には「ローグライクってなに?」「メトロイドヴァニア?どういう意味?」という方もいらっしゃると思いますので、まずはそこからお話していきましょう。
「ローグライク」とはプレイをする度にステージの構造やアイテム、敵の種類や配置などが変わるという、実に気まぐれで一期一会なゲームの総称です。日本では『不思議のダンジョンシリーズ』が有名ですね。
「ローグライク」には敵に倒されてしまうと、アイテムやお金、はたまた経験値まで失ってしまうものも多く、緊張感あるゲーム性にもとても人気があります。
毎回プレイヤーに降りかかる展開が変わるので、何度でも遊べるという所にも定評がありますね。「1,000回遊べる!」みたいなキャッチコピーのゲームもかつてはありました。
それ対し「メトロイドヴァニア」は、敵やアイテム配置などが緻密に計算されたステージを、プレイヤーがじっくり探索していく事に重きを置いたゲームと言えます。
「メトロイドヴァニア」の傑作と言うと『スーパーメトロイド』や『悪魔城シリーズ』『Hollow Knight(ホロウナイト)』辺りが有名ですね。
新たな能力やアイテムを手に入れることでどんどん操作が快適になったり、前は通れなかった場所が行けるようになって行動範囲が広がっていく。
そんな楽しさが「メトロイドヴァニア」ならではと言う感じがしますね。
しかし、よくよく考えて見ると「ローグライク」と「メトロイドヴァニア」、それぞれのジャンルでやっている事が真逆で、まるで 水 と 油 のようなものだったりします。
それぞれのジャンルとその内容を比較してみると、よくわかります。
ランダム要素を緊張感や予想できない展開として上手く利用した前者。
緻密に練りに練ったステージ構成を作り込んだ後者。
相反する特徴を持ったこの二つジャンルを混ぜて大丈夫なのか?
私のような凡人は、そんな心配をにわかに感じてしまうわけですが…
「完 全 融 合!!」
本作は見事に混ぜ合わせています!
例えばステージの構成について見ていきましょう。基本的には「ローグライク」のように自動生成でゲームオーバーになるたびに毎回その姿形を変えます。
その中でも無条件で行けるルートと、それとは別に「メトロイドヴァニア」のようにキーとなるアイテムや能力を使うことで進むことができるルートが生成されるようになっています。
▲同じステージ内で無条件で行けるコースもあれば…
▲特定の能力を身につける事で初めて行けるようになる分岐ルートも生成される
もう少し分かりやすく、図にしたものを見て頂きましょう。下の画像をご覧ください。
因みに、このゲームは基本的な武器や装備類はゲームオーバーの度にロストします。
大事な事なのでもう一度言います。
「このゲームはアイテム類は敵にやられると全部失います」
ですが、「分岐ルートを進めるためのキーとなる能力」はゲームオーバーになっても失わないんですよね。
そのお陰で、ゲームオーバーを繰り返しながらも、どんどん分岐ルートを進むキーとなる能力を集めていき、次第に進めるルートが増えていくと。
これは正に探索範囲がどんどん拡張していく「メトロイドヴァニア」のゲームが持っている特徴です。
▲分岐するステージは多種多様。繰り返し遊ぶゲームスタイルにありがちなマンネリ化を感じさせない工夫としても成功している。
分岐先によってそれぞれの敵や罠等傾向が異なりますので、自分が得意なルートを選んで攻略するもよし。
逆に訪れていない分岐先のステージで、キーになりそうなものが見つからないか探してみるのも良しです。
「ローグライク」の毎回ステージの形が変わる新鮮さや楽しさを残しながらも「メトロイドヴァニア」の探索の広がりの楽しさを共存させることに成功した「ローグヴァニア」。
相反する水と油のようなジャンルの良い所を、ちゃんとゲームとして面白くなるように融合させたところはホント痺れますね。
失いたくない感ハンパナイ
「ローグヴァニア」の良いとこ取りなのは、なにもステージの分岐の部分だけではありません。
アイテムの入手や成長要素では「ローグライク」のシステムを全面的に取り入れています。
本作ではXボタン・Yボタンにそれぞれメインである武器を、ZLボタン・ZRボタンにサブ武器を装備できます。(オプションでボタン配置をカスタマイズもできます)
▲メイン・サブ以外にLボタンに回復が割り当てされている。それらの上にあるアイコンはステージ間に現れる人物に付与してもらえったスキルを表記している。
メイン武器は何度も連発できる通常攻撃。
サブ武器の方は罠を仕掛けたり爆弾を投げる等特殊な攻撃を行います。
メインとサブの違いとして、サブは使用後に一定のリロード時間が必要のため、連発ができないようになっています。
これらは初期装備以外は、ステージ落ちているものを拾ったり。宝箱の中から入手したり、お金を払って購入もできたりと入所方法はさまざまですね。
▲宝箱には大方アイテムが入っているが…稀に迷惑なものが入っている可能性も…。
ですが前述した通り、ゲームオーバーになれば全部を失います。
これは「ローグライク」のゲームの特徴ですね。
加えてこのゲームでは、それぞれのアイテムには攻撃力などの性能以外にランダムで付いてくる特殊効果というものがあります。
▲緑の字で書かれているのがランダムで付与される特殊効果。気に入らなければとある場所で他の効果と付け替えることもできる(自分で好きなものを選べはしないが)。
例えば同じ名前の弓でも矢を射ると地面に火柱が立つものや、倒した敵に毒をまき散らさせる等ユニークな特性があったりしますので、同じアイテムを見つけても使い勝手が変わってきたりするわけですね。
この辺りは「ローグライク」や「メトロイドヴァニア」というよりも『ディアブロシリーズ』の様な「ハック&スラッシュ」のゲームからの影響が垣間見えます。
ただでさえ倒されればロストしてしまうのに、「もう次はいつ会えるかどうかわからない」と考えると、良いアイテムに出逢った時の失いたくない感はなかなかのものがありますね(笑)。
因みに、本作では最初から全てのアイテムが解放されているわけではなく、「アイテムの設計図」を入手してアンロックしていく事になります。
▲アイテムの設計図を見つけた時のワクワク感がたまらない。
初めは数種類しか出現しないアイテムも図面を入手してどんどんステージ中に登場する種類が増えていくので何度もプレイしたくなりますし、より良いアイテムを使えるようになればより戦いやすくなっていくわけですね。
ただし、この図面は入手してお終いではありません。
ステージ間に居るある人物に渡して初めて登録がされるものなので、途中で敵に倒されると設計図をロストしてしまうというスリリングな体験を味合わせてくれます。
特に「奇跡の○○」というレアな設計図を拾った時は、ヒヤヒヤものですね。
宝くじで大金を当てた人のように「なんとか生き延びねば!」と必死さが増します(笑)。
設計図を解放しても結局出てくるのはランダムなので、中にはネタ武器とも言える変なものや癖の強いものを使わざるを得ないという事も置きます。
しかし、意外と使ってみると強かったり他のアイテムとの相性が上手くハマったり等新たな発見があるのも本作の面白い部分ところですね。
どうしても「これは使えない!」と思うものであれば、ステージ中に出てこないようにロック状態に戻すこともできます。
どんどんアイテムをアンロックして色々と試したくなる仕様はゲームへのモチベーションを高く維持させ、このおかげで中毒性もかなり高くなっていますね。
この手のアンロックにハマる人は時間泥棒の被害にあうので、どうぞご注意ください。
気持ち良すぎる操作性
ひとつ「メトロイドヴァニア」の良作にある共通点として挙げられる部分に「キャラクターの操作性の気持ちよさ」というものがあります。
例えば代表格の『メトロイド』で言うと、作品によってばらつきがあるものの、主人公のサムスは同じ任天堂のキャラクターである「マリオ」や「リンク」よりも運動神経も良く、俊敏にチューニングされています。
▲任天堂のアクションゲームの主人公は皆超人的運動神経だがサムスは特に突出している(但しカービィには及ばないが)。
これは「メトロイド」というゲームが『マリオ』や『ゼルダ』以上に上に登ったり下に下りたりとステージを何度も行き来する事や、その二作品よりも攻撃的な敵とのバランスを考えた結果なのではないかと私は考えています。
本作もそれは同様で、操作のなだらかさや気持ち良さにこだわった調整がされていて、この手のゲームの中でもトップクラスの操作性の良さを感じさせます。
これに関しては百聞は一見に如かずな所なので、以下わたくしのツイートに貼った動画をご覧ください。
スピード感がクセになるっ!
操作感最高かよ!#Dead Cells #NintendoSwitch pic.twitter.com/bWMwlM5hDL— にぃど@任天堂ゲー・モンハン・ユナイト (@switch_for) August 7, 2018
これはゲームを開始して2時間くらいにキャプチャーした動画です。
シンプルな操作性でアクションゲームを遊んでいる人なら、すぐに慣れて軽快な動きができるようになります。もっと上手い人が操作したら凄い動きをしそうですね。
ゲームの最初からできる回避行動(ローリング)は滑るようになだらかに前後の動作と繋がり、機動力もかなり高いです。
腰ぐらいの高さの段差ならジャンプしなくてもそのまま方向キーを入力していればそのままスルっと自動で登ってくれて非常に楽ですね。(これは他のゲームでも是非採用していただきたい!)
また、ジャンプ中に下Bボタンで繰り出す急降下して地面を叩きつけるアクション。これはとても重要で、敵に当ててピヨらせて攻撃するという攻撃の始動にも使えます。
▲急降下で叩きつけられた敵は頭上に星マークが現れ少しの時間行動不能になる。これを上手く使えるとかなり気持ちいい。
そしてなにより敵と接触してもダメージを受けず、すり抜けてくれるのが良いですね。敵にぶつかってダメージを受けるとついつい慎重になって足が止まりがちになっちゃいますから。
お陰で遠慮なく敵中に思い切って突っ込んでいけますので、慣れてくると非常に疾走感のあるプレイを楽しむことができます。
中毒性のあるシステムにこの気持ちの良い操作感は非常に相性が良く、止め時を失うのを助長させているのは間違いありません。
折れない心が重要
ゲームの難易度の感じ方は人それぞれ個人差があると思いますが、「ローグライク」や「メトロイドヴァニア」のゲームは比較的難しいゲームが多いです。
本作はその二つを融合したゲームという事もあって、何度もゲームオーバーにさせられる「死にゲー」の様な難易度で中々苦労が絶えません。
特に感じるのはボスの強さで、理不尽さこそありませんが、かなり強いチューニングがされているためやすやすと進めさせてはくれません。
▲ボス戦は『ロックマン』の様に小部屋で戦うガチ勝負。相手の攻撃を見極めるのもそうだが持っているアイテムもかなり重要。
正直アクションゲームが苦手な人は、すぐに無理だと諦めて投げてしまう人もいらっしゃるかもしれません。
しかし、回復アイテムの所持数を増やすなどで段々と攻略を楽にする要素はありますし、罠系のアイテムなどモノによってはかなり効果的なものもありますので、自分の引きが良いことを祈りながらプレイしてみると案外スッと進めたりもします。
とはいえ、どんどん奥へ進むほど高難易度になってきて、非常にマゾいバランスへといざなわれていくゲームデザイン的になっていますから、一気にクリアを目指すというよりも他のゲームと並行して遊び続けたり気長に遊ぶ感じが良さそうですね。
プレイして一気にクリアを狙うというよりも、アイテムをアンロックし続けてそのうちクリアできたらいいな位の構えで挑むのを想定して作られている印象を受けます。
じっくりでも駆け足でも楽しい
面白い事に、本作はローディング中にテキストで「焦らずゆっくり進めると事が大事」とプレイヤーに提唱する一方で、スピードランの遊びもちゃっかり盛り込ませています。
例えばステージ中には制限時間を設けた扉が出現します。時間内にたどり着かなければ扉は閉ざされて中へ入れません。
扉の奥には、多額のお金など報酬がしっかり用意されていますので、それを目当てに急いでステージを駆け回るというのも一つの遊び方として楽しめるようになっています。
▲急いで来た甲斐あってザクザク報酬がゲットできる。
また、ある特定の条件をクリアすると「デイリーチャレンジ」というタイムアタック&スコアアタックのモードを遊べる様になります。
こちらはステージは日替わりで入れ替わるステージを、制限時間内に攻略するというモードです。構造やアイテム、敵の種類や配置などはその日のステージ毎に固定されています。
▲左上の制限時間内にクリアを目指す。
▲時間を過ぎればチャレンジ失敗。エンドコンテンツ的なものなのでメインモードよりも難しい。
ノーペナルティで何度も挑めますのでアイテムや敵の配置を覚えていかに効率よく進められるか考えたり、スコアを他のプレイヤーとオンラインランキングで競いあうなど、本編とはまた違った遊び方ができるモードですね。
前述したように本作は操作性が気持ちいいゲームなのでこういったスピードラン的な遊びとも相性が良くかなり楽しいです。
じっくり遊んでも楽しいし、急いで遊んでも楽しい。この両方で満足させるような懐の深さも、このゲームの素晴らしい部分ですね。
最後に
本作は「ローグライク」と「メトロイドヴァニア」という、二つの尖ったジャンルを絶妙なさじ加減で融合させた見事な作品です。
難易度は高めですが、操作感が非常に気持ちよく何度もトライしたくなるような発見やチャレンジがプレイの度に現れてなかなか飽きが来ないタイプのゲームと言えますね。
止め時を失う恐ろしい魔力を秘めたゲームなので、好きな人は本当に延々と遊べてしまいそうです。
一気にクリアまで行けない、何度も何度もトライアンドエラーを繰り返すゲームというものを、どう受け止めるかでその人の評価も変わってくるところもあるかと思いますが、かなり評判が良いところを見るに、当記事を見て良さげに思った方は特攻しちゃっても良いのではないでしょうか。
価格は2500円弱とややDL専用タイトルにしては高めではありますが、私個人的には値段以上の楽しさに大満足という感じですね。
「ローグヴァニア」というキーワードにピンと来て興味を持たれた方には、割と自信を持ってオススメできるゲームです。