Switch版『イース8 ラクリモサ・オブ・ダーナ』レビュー・感想~無人島にいこうよ!古代種の森~

『イースシリーズ』は1987年から30年以上続くアクションRPGのシリーズで、本作『イース8 ラクリモサ・オブ・ダーナ』はその最新作です。

元々本作はVITA専用ソフトとして作られましたが、その後に高解像度化や色々な要素が追加されたPS4版が発売されこの度Switchに移植された…という流れで色々とハードを跨いで発売されています。

ソフト開発は日本ファルコムで、かつて『ゼノブレイドシリーズ』の高橋総監督やあの『君の名は。』の新海誠監督が在籍していた老舗ソフトウェアメーカーというのは知っていたのですが、今まで同社のゲームを遊んだことがなかったんですよね。

本作はシリーズ最高傑作と言われる非常に評価の高い作品という事で前々から気になっていたところもあって、Switch版発売の機会に今回初プレイしてみました。

Switchユーザーの方には私の様に『イース』の名前は知っているけど遊んだことがないという人も多いと思いますし、そういった方にも参考になればと思い、本日はレビューをさせて頂きます。

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8番目のナンバリングだけど旧作との繋がりはほぼ気にしなくてもOK

私の様な今迄『イースシリーズ』を遊んだことがない人にとってナンバリングで『8』と付いてると新参者お断り!って感じがしますが、本作はシリーズ初経験でも全然問題ありませんでした。

『イースシリーズ』は毎回主人公が赤髪のアドル・クリスティンと決まっており時系列のあるナンバリングになっているのですが、それぞれが独立した冒険譚になっているので前後の繋がりを気にしなくてもOKなんですね。

出典元:4Gamer

▲イースシリーズの主人公”冒険家アドル”

特に本作は主人公アドルが流れついた無人島で面識のない人たちと協力し島から脱出を図る…という物語なので兎に角色々な事が初めて尽くしなんです。

出会う人も殆どがどういう生い立ちや性格の人か最初はわからないし、無人島に一体どんな世界が広がっているのか分からないところから始まるわけです。

主人公がプレイヤーと同じで知らないことだらけの設定なので新規プレイヤーでも入りやすいんですよね。

ここまでバッサリとシリーズから独立した作品ならいっその事『イース ラリモサ・オブ・ダーナ』ってナンバリング外した方がSwitch版で新規プレイヤーが増えそうですが、外伝っぽくなるのは避けたいんでしょうかね…。

 

細かいことは考えなくて良い!爽快に突き進むアクションRPG!

本作のゲーム性の特徴は兎に角簡単操作で爽快に戦闘アクションを楽しめる事に特化している点です。

ゲームのほぼ7割くらいは走り回って戦っているゲームですので極力ストレスがなくサクサクアクションできる様になっています。

操作感は他のゲームで例えると『無双シリーズ』に近い感じですね。

攻撃は素早く連打しているだけでコンボが繋がりますし、スキル(攻撃技)はLボタン+XYABの各ボタン押し、ワンボタンで直ぐに仲間の操作に切り替えられますので特に複雑な操作なく直ぐに馴染めます。

▲ボス戦は相手の動きを見極めて戦うモンハンっぽさを感じさせる

因みにスキルはゲージを消費して使用する為連発し続けることはできませんが、直ぐに溜まるので『ボス迄MPを温存しておこう』などのドラクエ的なリソース管理をしなくてもOKです。

しかも使えば使うほどスキルは成長して強くなるので使ったもん勝ちですし、中には敵を引き付けるとか毒を与える負荷効果もありますがオマケに近い存在で戦略性はバッサリ切り捨ていて”兎に角好きなスキルをどんどん自由に使ってください”というゲームになっていますね。

防御手段もガードや回避ができますが相手の攻撃の当たるタイミングに合わせると一定時間無敵になったり相手の動きがスローモーションの効果が発動するようにもなっています。

なので上手い人や慣れた人ならひたすら”俺のターン”という状況にもできます。

この辺りの無敵感ある防御システムもRPGというよりもアクション寄りな感じがしますね。

難易度バランスもノーマルなら殆ど詰まることはない温めな上にアイテムもじゃぶじゃぶ手に入りますのでサクサク進められます。(簡単すぎるのであれば難易度をあげて挑むことも可能です)

奥深い戦略的な戦闘システムを求めている人には本作は少しシンプル過ぎるかもしれませんが、ややこしい戦闘システムにうんざりしてしまう人や引っ掛かりなく進められるゲームを求めてる人には本作は向いてますね。

 

序盤の立ち上がりは鈍いがそれを過ぎたところから本領発揮する

本作はアドルの他にもダーナという少女がもう一人の主人公として登場しますが、アドルが一日を終えて眠ると夢の中でダーナの物語が始まり、その途中で目が覚めて再びアドルの世界に戻る…というような形で二人の主人公の物語を交互に進行させていくタイプになっています。

▲アドル(左)とダーナ(右)、二人の主人公が並行し交差する物語

序盤はダーナの存在がぼんやりしていてほぼアドルの探索のパートなのですが、淡々と無人島を探索→仲間やアイテムを見つける→村の施設が充実→探索に戻る…という流れが続くので正直退屈でした。

普通RPGって強大な敵や得体のしれない謎を最初にドン!と突き付けてそれに対して『何とかしなきゃ!』って強くプレイヤーに動機付けさせるものが多いじゃないですか。

その点本作は『船が転覆して無人島に流れ着いちゃったからとりあえず頑張って生き延びようぜ』っていう不運な人たちのD〇SH島生活な流れで最初の内は進行して行くので物語としては物凄く地味なんですよね。

ただ、序盤過ぎた辺りからから物語は盛り上がりを見せちゃんと面白くなってきます。

それまでぼんやりと夢の中で見るだけのダーナを実際に自分で操作できるようになって主人公の二人が一体どうやって関わってくるのか?二人は実際に出あう事が出来るのか?…その辺りの展開の期待もあって物語にグイグイ進行を引っ張られてきますね。

ですので序盤はチュートリアルみたいなものだと割り切って中盤始まったぐらいから本番のゲームだと考えて挑むのがちょうど良さそうです。

その頃には仲間を集めたりする探索要素もメインストーリー進行ではなくサブクエスト的なポジションに移行していく感じになっていて探索への強制感が薄れているのも良かったですね。

ある程度仲間を集めたりサブクエストをクリアする事でトゥルーエンドが見れるなどご褒美もありますので探索やサブクエストをこなすのも大事ではありますが、気が向いたらやればいいのでかなり心理的に楽になりますね。

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演出やマップ構成等目を瞑らなくてはならない部分も多い

ここからはちょっと辛口なコメントになります…(長年のイースファンの方がご覧になられてたらすいませんっ!)

元々VITA専用に作られたものであったり、ファルコムが中小企業の数十人でゲームを作っている会社という事で仕方がない部分ではありますが、本作は現代のゲームにしてはチープな部分がかなり多いです。

特に目立つのはカットシーンです。

ゲーム機の性能が上がってアニメに近い表現ができるようになったこの時代に本作のPS2の時代を彷彿させるCGの人形劇は正直かなり微妙です。

▲アニメーションはぎこちなく10年位前のゲームを彷彿させる

画面を暗転させてシーンを見せないことで演出をカットしている場面も多々あり、予算の少ない台所事情が見え隠れしちゃいますね。

全体的に背景もザラザラした絵作りやのっぺりしたポリゴンでお世辞にも綺麗とは言えず…時折ロケーションポイントと呼ばれる場所での仲間の『すげぇ絶景だな!』というコメントに『お、おう…これが絶景…か…?』と戸惑いを隠せません。

▲目を細めれば絶景に見えなくもないが…

あとVITAの性能上そうせざるを得なかったのでしょうが、マップがエリア式のぶつ切りで短いとはいえ頻繁にロードを挟むのも気になります。

マップは全体を見ると凄く大きく作っていてがんばっているのでこれが全部シームレスに繋がってたら最高でしたね…。

Switchでは『ゼルダ』や『ゼノブレイド2』等でシームレスに美しい世界が繋がっているゲームに慣れてしまっている人が多いと思いますし、このシステムはかなり古臭いゲームを感じさせる可能性は高いでしょう。

やはりこの辺りは大手の会社が作るようなリッチなRPGとはなれない限界を感じさせますので、ある程度こういうものだと割り切る必要があります。

 

ボリュームはしっかり欲張りなくらい詰め込んでいる

本作は適当にサブクエを摘まみつつクリアを目指して40時間弱位のボリュームでやり込めばその倍位は遊べるアクションRPGにしては相当しっかりしたボリューム感があるゲームです。

素材集めとかサブクエの消化も据置専用のゲーム機だとちょっとダレてしまいそうですが携帯モードなら苦になりにくいですしやり込みの内容はSwitchと相性ピッタリです。

ただ色々詰め込んでいる分これは正直いらなかったのでは?と思う要素もあります。

物語を進行している途中で挟まれる『迎撃戦』は特にそれを強く感じました。

この『迎撃戦』はアドルたちの拠点『漂流村』を襲ってくるモンスターから守る強制イベントでちょいちょいゲーム中に挟まれるんですよね。

▲設置したデコイ等で敵を引き付けて村を守る柵を防衛する

所謂タワーディフェンス的な感じで四方からWave形式で襲ってくる敵に村への門を突破されない様に撃退するというルールです。

一応罠などを設置したりもできるのですが、結果的に戦略性もなくただ敵を倒すだけの大していつもの戦いと変わらない戦闘に終わってしまってるのが残念な所でして…。

本作はファストトラベル(ワープポイント)が沢山設けられているので村に戻るのは大して苦ではありませんが、それでもわざわざ戻って敵と戦うだけってのも微妙な感じで…もうちょっと設置した大砲を使って撃退するとかそういう遊びができればまた違った印象だったような気がします。

恐らく探索やストーリーの進行にメリハリを付けるために導入しているとは思うのですが、ちょっと欲張って中途半歩なものを付け加えちゃったかなという印象ですね。

逆に個人的にこの要素は入っていて良かった!というのが『釣り』です。

冒険の舞台となる島には海や川、池、沼などがあり魚たちが生息しているポイントが設置されていて釣りを満喫できます。

▲餌さえあれば好きな場所でいつでも釣りができる

釣りのミニゲームが導入されてるものといえば『どうぶつの森』や『モンスターハンター』を連想しますが本作のはそれよりも趣向を凝らしたものになっていて、小さい魚であれば単純にボタンの連打するだけで簡単に釣れますが、大物の主クラスになるとスティックの入力やLRボタンを入力しながらすばやく連打が必要だったりかなり熱いフィッシュファイトが楽しめます。

これが思った以上に面白くて、本格的に無人島を舞台にした釣りのゲームが無償にやりたくなりますね(笑)

 

『イース8 ラクリモサ・オブ・ダーナ』の総評

映像面や演出面ではかなり他のゲームと見劣りはしますし、古臭いゲームデザインからも今の時代の一級品のアクションRPGとして扱うのはちょっと違う気もしますが、全体的に無理をせずできる範囲で丁寧に沢山の要素を詰め込んでいるところに本作の評価の高さの理由があるような気がします。

どこか特別に突出した部分はないのですが、例えば雑魚モンスターは無双の様にバサバサ倒せるし、ボスモンスターはモンハンの様に予備動作をしっかりとらえてスキを突く楽しさがあるし、着々と人を増やして村の施設をよくしていったり、時には海や川で釣りを楽しんだり…色んなゲームの面白い要素が集まっていて充実した体験ができますからね。

ドラクエやFFみたいに100万本を超えて売れているようなゲームは別としてシリーズ8作目のナンバリングとなると評価がいくら高くても『一部のファンの人達しかそれを楽しめないんでしょ?』みたいな目線もあると思いますが、本作は初めて『イース』を遊ぶ人にも今までのファンの方と同じように楽しめる作りになっているのもまた素晴らしい所です。

Switchはまだこの手のアクションRPGも少ないですし、一人で長くがっつり遊べるゲームを探しているという人にはお勧めのタイトルですね。

ただ最後に一つ注意点として言っておきたいのが…ゲームの内容とは別の話になりますが、時折画面が揺れたりするようなバグが発生したり負荷が掛からないようなときでも解像度が大きく落ちたりと移植の質は正直完璧ではない印象です。

幸い進行不可になるようなクリティカルなバグは遭遇していませんが、ある程度そういったことが起きる可能性があるとご理解の上で購入検討をお勧めします。

 

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