Switchの生命線、ゲームエンジンについて語る

皆さんはゲーム制作で使われるゲームエンジンというものをご存知でしょうか?ゲームエンジンはもっと広義な言い方でミドルウェアとも言われたりしますが、簡単に言ってしまうとゲームを作るためのソフト、アプリです。『RPGツクール』を知っている人はあれと似たようなものだと思っていただいて大丈夫です。

今の時代は求められるゲームも複雑化巨大化していて人間が一つ一つソースコードを1から打ち込んで作り上げるのが難しい時代です。ゲームが進化していくにつれゲームエンジンも進化し、ゲームづくりの柱としてなくてはならないものになっています。

また、ゲームエンジンはプログラミングの知識に長けていない人でもゲーム作りに参入できるようになり技術者の裾野を広げる事にも貢献しています。私も『Unity』というエンジンをPCに入れていますが、特別なプログラムスキルが無くても個人でアプリやゲーム開発ができる時代になっているのです。

そんな現代のゲーム作りにおいて重要なポジションに立っているゲームエンジンとSwitchの関係にクローズアップしたお話を本日はしていきたいと思います。

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ゲームエンジンの重要性。対応しないとどうなるの?

エンジンの有名どころで『Unreal Engine』や『Unity』、『Havok』辺りはゲーム起動時に出るライセンス表示等ゲーム愛好家の方であればどこかできっと目にされていると思います。

多くのゲーム開発者がこれらのエンジンを使ってゲームを開発しており、当然Switch等のゲームハードはゲームエンジンの対応は必須なのです。

しかし、Switchの前世代機であるWiiUは実はこのゲームエンジンの非対応によってソフト不足に苦しんだハードでした。

出典:WiiU 公式HP

一番大きなところで『Unreal Engine4』(以下:UE4)の非対応です。UE4はWiiU発売前辺りでは使っているメーカーはそこまで多くはありませんでしたが、WiiU発売後どんどん拡大していきます。

日本で言えばバンダイナムコの『鉄拳7』『ドラゴンボールファイターズZ』『ソウルキャリバー5』はUE4ですし、スクエニも自社オリジナルのエンジン『ルミナス』を持っていますが『キングダムハーツ3』や『ファイナルファンタジー7リメイク』をUE4で作っていますね。

これは日本の大手だけでなく、寧ろ海外の大手やインディーズに広がっていて、『WiiUは私たちが使っているエンジンが対応してないからゲームを出せません』と開発者から遠ざけられていた事情があったわけです。

それに加えてWiiUは普及台数にも伸び悩んだため、UE4だけでなく大手各社の自社オリジナルゲームエンジンにも対応がされぬまま、任天堂を中心にごく一部のメーカーだけがゲームを出す…というような状況になってしまったわけです。

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前世代の反省を生かし作られたSwitch

任天堂も流石に単独で一つのプラットフォームを支えるのは無理だと改めてWiiUで痛感したのでしょう。

次世代機のSwitchではゲームエンジンの対応に未だかつてないほど尽力をし『UE4』、『Unity』等の有名どころは勿論、大手各社のゲームエンジンも含めて発売前発売後と次々と対応を増やしています。

出典:ニンテンドースイッチのパートナー企業、全48社が公開!

本体の世界での普及スピードも据置史上最速という事も合わせて、幅広くゲームエンジンに対応したSwitchはこの一年で結果的にPS4やXbox Oneの一年目を大きく上回るほどの数の対応ソフトを生む事へと繋がりました。

Switchは発売当初WiiUの様にソフト不足に陥るという懸念を持たれており、今でも大手サードパーティが乗り遅れていることを指摘されることもあります。

しかしゲームエンジンを着実に対応していることもあって、ゲーム開発者たちの意欲的にSwitchにゲームを出したいという声は日に日に増え続けており、それに対して準備がしっかりと整えられている状態になりつつあります。

 

Switchで作られているゲームはどんなエンジン使ってる?

実際Switchでどんなエンジンが対応しているのか、それを使ってどんなゲームが作られているのかいくつか抜粋してご紹介します。

▼Unreal Engine 4 / Epic Games

フォトリアルなグラフィックや広大なフィールドのオープンワールドのゲームを作るのを得意としたゲームエンジンです。AAAタイトルの多くがこのエンジンを使用しておりUE4といえば大作ソフトのイメージがありますが、その扱いやすさからインディーズデベロッパーにもよく使われています。

・ヨッシー新作 / 任天堂

ヨッシー以外にも任天堂関係の開発会社でUE4を使える人を条件に求人を出しているのが複数確認されており、任天堂も積極的にこれからUE4を活用していくのでしょう。UE4はこのようなフォトリアルな映像が得意なエンジンなのでピクミンやちびロボ辺りとも相性が良さそうですね。

 

・ドラゴンクエスト11 / スクウェア・エニックス

元々UE4で作ったPS4版をSwitchに移植する事になるようです。SwitchのUE4の対応しているバージョンがPS4で作った時のバージョンより新しいものなので、バージョンのアップデートに合わせた調整で時間がかかっているようですが、これだけの大作が比較的早い段階で移植の話が出るのもUE4という汎用エンジンに対応したお陰でしょう。

 

▼Unity / Unity Technologies

Unityは汎用ゲームエンジンとしてトップシェアに君臨しています。無料版やサポート、ライブラリの充実で初心者や小さなデベロッパーでもゲームを作りやすい環境を整えており、家庭用ゲーム機は勿論のことiOS/AndroidらスマホのOSにも対応で非常に幅広く展開できるため、大手中小独立系問わず使用されています。

 

・サガスカーレットグレイス 緋色の野望 / スクウェア・エニックス

これは元々PSVitaに出ていたゲームです。UnityはVitaとは相性があまりよくなくサガスカも戦闘時のロードの長さが不評でしたが、SwitchはVitaと比るとマシンスペックも遥かに高いのでその辺りの改善も見込めますね。

 

・神巫女 / フライハイワークス

Unityはゴリゴリの3D大作ゲームも作れますがどちらかというとこの神巫女の様なコンパクトサイズの2Dゲームで使われることが多いですね。無料版でも結構なゲームが作れるのでインディーズデベロッパーにも人気のエンジンです。

 

▼Havok / Havok社

Havokは岩が転がったり者にぶつかった時の動きを計算する物理演算を行うエンジンとして一番メジャーな存在です。他のエンジンと一緒に組み合わせて使われることが多いのですが、やや癖のある物理演算の動きは独特な挙動を持つじゃじゃ馬っぽさもあり『Havok神』と愛称で親しまれています。

・ゼルダの伝説ブレスオブザワイルド / 任天堂

普通にHavokを使ってもこのゼルダの様に自然に物理演算が動くことはないそうです。ゲーム開発のプロが驚く程の魔改造を施しているようです。(詳しくは下リンクの対談を参照ください)エンジンメーカーと協力してカスタムしたという話でしたが、こういうことは他のエンジンやメーカーでも当たり前のように行われてるみたいですね。

参考リンク:まず2Dゲームで開発、社員300人で1週間遊ぶ!? 新作ゼルダ、任天堂の驚愕の開発手法に迫る。「時オカ」企画書も公開! 【ゲームの企画書:任天堂・青沼英二×スクエニ・藤澤仁】

 

PhyreEngine / Sony Intaractive Entertaiment

SIEのエンジンがなぜSwitchに対応?!と不思議に思う方も多いと思いますが、元々PSだけでなくXboxやPC等他社製品ともマルチプラットフォームしやすいという特徴を売りにしてソフトメーカーを誘致するために作られたようなエンジンなので、普及が急速に進むSwitchへの対応も必然と言えます。

・ドラゴンクエストビルダーズ / スクウェア・エニックス

ゲームの中に競合プラットフォーマーであるSIEのライセンスがSwitch版でも表示されるという面白い事になっています。今のところこのエンジンを使ったゲームはビルダーズだけの様なのでスクエニの要望で対応した可能性は高いですね。

 

GAMEMAKER STUDIO 2 / Yoyo Games

このエンジンは2Dゲームの制作に特化したゲームエンジンで、数々の名作インディーズゲームで使われています。先月のNintendo Directで『Undertale』が発表されたのとほぼ同時にエンジンの対応がアナウンスされましたが、同ゲームエンジンを使っている名作『VA-11 Hall-A(ヴァルハラ)』の開発者が喜びに震えるツイートが印象的でした。

・Undertale 

アンテはインディーズゲームの中でも抜群の人気を誇る作品です。米任天堂のインディーズ担当者もSwitch発売前後の早い段階から開発者へアプローチしており、開発者も任天堂ハードに出したいと常々考えていたようです。エンジンが対応していない事でなかなか実現が遠のいていたようですが、念願かなって発売されるSwitch版Undertaleは相当人気が出そうです。

 

MT Framework / カプコン

カプコン内製のゲームエンジンで『モンスターハンター』や『バイオハザード』『ストリートファイター』等の人気シリーズの多くがこのエンジンで作られています。カプコンはSwitchのハード構想段階から深く関わっており、かなり早い段階でこのエンジンを対応させていますが、任天堂もカプコンがMTFで得たものをフィードバックとしてSwitchへと反映させるなど、大きな影響を与えています。

・モンスターハンターダブルクロス for Nintendo Switch / カプコン

3DSから移植・リマスターされた本作ですが、MTFで作られていたゲームという事もあってSwitchが発売して半年も経たない時期に発売されました。3DSとSwitchという凄まじい性能差のあるハード間の移植でも、ちゃんと見合ったものが提供できるというのはMTFの対応力やその優秀さが伺えます。

 

▼KTGLエンジン / コーエーテクモゲームス

コーエーテクモの内製エンジンで、襟川社長曰く一つのハード向けに作ったものを各プラットフォームにスイッチポンで移植できるというマルチプラットフォームの移植性の強さが特徴の様です。確かにコエテクはまだSwicth一年目だというのに10本近くのタイトルを既に出しておりどこのサードパーティよりも対応が早いです。上手くコストを抑えて沢山のソフトを販売して利益を出すというコエテクの方針に沿った仕様は、自分たちの要望に合わせて作り上げられる自社エンジンのメリットですね。

・ファイアーエムブレム無双 / コーエテクモゲームス

KTGLエンジンといえば無双シリーズですがこのFE無双には面白いエピソードがあって、実は開発者の人たちがこのゲームをSwitchで出すと知ったのがSwitchの発表会の時のお披露目PVだったそうです。それまでは管理者クラスしか知らずにWiiUのソフトだと思って作っていたそうで…ビックリな話ですよね。その後半年ほどでFE無双は発売されるのですが、半年でSwitchに対応できるKTGLとコエテクの開発スピードには驚かされます。


このほかにもベセスダ傘下のid Tech6で『DOOM』『ウルフェンシュタイン2』が作られていたり、シリコンスタジオのYEBIS3等数々のゲームエンジンを対応しているSwitchは今迄の任天堂ハードにはないほどのエンジンに対する充実ぶりを見せています。

ハードの性能上、『FINAL FANTASY15』の様な一部のフォトリアル系AAAタイトルの移植は難しそうですが、こういったエンジンを一通り揃えた今、インディーズのタイトルから日本の大手の人気タイトルまで開発できる準備はしっかりと整っていると言えます。

あとはどれだけSwitchのビジネスにサードパーティが魅力を感じてゲームを投入するかということなので…今後注目していきたいですね!

 

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